京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

予防医療学分野、岡田遥平研究員、石見拓教授らは、シンガポール大学のMarcus Ong教授らと共同研究を行い、大阪とシンガポールの院外心停止の患者の社会復帰率の違いについてCritical Care誌(IF = 15.1)に発表しました。

一般 2023年11月30日

近年、心停止患者の蘇生に体外式膜型人工肺(ECMO)を使用するECPR(Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)戦略が注目されています。しかしこのECPR戦略は地域によって実施状況が異なります。例えば、大阪では初期波形が電気ショック適応の心停止患者の30~60%にECPRが行われていますが、シンガポールでは1%未満です。岡田遥平 予防医療学分野研究員、石見拓 同教授、およびMarcus Ong (シンガポール大学 Duke-NUS Medical School)教授らの共同研究グループは、この違いに着目し、2つの地域での初期波形が電気ショック適応の院外心停止患者の転帰に違いがあるかを検証しました。

この研究では、大阪の院外心停止のデータベース(Osaka-CRITICAL study)から導出された機械学習モデルを、シンガポールのデータベース(SG-PAROS)に登録されている初期波形が電気ショック適応の院外心停止患者1,789人に適用しました。病院到着時に心停止から回復した患者では、観察された良好な神経学的転帰は大阪のデータに基づく予測と同程度でした(観察-予測比:0.905[95%信頼区間:0.784-1.036])。一方、病院到着時に心停止が継続していた患者の転帰は大阪のデータに基づく予測よりも低いことがわかりました(病院到着時に電気ショック適応の患者、観察-予測比:0.369[95%信頼区間:0.258-0.499]、ショック非適応な患者、観察-予測比:0.137[95%信頼区間:0.065-0.235])。

本研究の結果は、ECPRを含む蘇生戦略が地域に与える影響を示唆しており、ECPR戦略を導入することでシンガポールにおける院外心停止患者の転帰のさらなる改善に役立つ可能性を示しています。

本研究成果は、2023年9月12日に、国際学術誌「Critical Care」(Impact factor 15.1)にオンライン掲載されました。

Okada, Y., Shahidah, N., Ng, Y.Y. et al. Outcome assessment for out-of-hospital cardiac arrest patients in Singapore and Japan with initial shockable rhythm. Crit Care 27, 351 (2023).
Outcome assessment for out-of-hospital cardiac arrest patients in Singapore and Japan with initial shockable rhythm – Critical Care