遺伝医学専門基礎科目
遺伝医療と倫理・社会
遺伝医療・先端医療においては、倫理的な配慮は不可欠である。遺伝医療を中心とした医療倫理の基本について学ぶ。特に種々のガイドラインの理解は極めて重要である。また、社会的な基盤を含む日本の遺伝医療の現状について理解する。
基礎人類遺伝学
遺伝カウンセラーとしてあるいは遺伝医学・遺伝医療を志す者として最も基本的な事項について理解するための講義である。今後、遺伝情報を治療に役立てていくテーラーメイド医療のためにも重要である。細胞遺伝学、分子遺伝学、メンデル遺伝学、非メンデル遺伝、集団遺伝学などについて系統的な講義を行う。
臨床遺伝学・遺伝カウンセリング
遺伝カウンセリングの基本的な考え方、モデル、現状などの総論的な講義を行う。また、代表的な疾患について、チーム医療としての遺伝医療に参加することのできるレベルの知識と考え方を身につけ、遺伝医療の現場で行われている問題を解決するため、臨床遺伝学の講義を行うとともに家族関係やチーム医療としての遺伝カウンセリングにもフォーカスをおく。各論として、単一遺伝性疾患、染色体異常、多発奇形、習慣性流産、家族性腫瘍、神経変性疾患、多因子疾患などについて講義する。
遺伝サービス情報学
遺伝医療に従事する者にとって、遺伝関連情報の収集・評価は必要不可欠な技術に現在なっている。本講義では、一般的な医療情報のデータベースならびにガイドライン検索に加えて、遺伝子と遺伝性疾患に関連するデータベースの利用方法、バリアントの評価方法を体系的に学習し、遺伝医療におけるEBM(根拠に基づく医療)の実践のために必要な知識・技術を学ぶ。
ゲノム科学関連専門科目
ゲノム科学と医療
本講義の目的は、ゲノム科学の発展が21世紀の医学研究や医療にいかなるインパクトを与えるのかを理解することにある。本講義では、ゲノム科学に携わっている研究者の最新の研究成果とその臨床医学における実践的な応用ならびに応用の可能性についての授業を、各分野の専門家による講義として行う。
医療倫理学各論
医療・研究・公衆衛生におけるELSI(Ethical, Legal and Social Issues)の検討・動向について学ぶ。事実の見方は一通りではないかも知れない。各回、講師から提示された状況について、基本的な知識を身につけつつ、あるいは従来の議論の限界を確認しつつ、倫理面での葛藤に取り組む。
遺伝カウンセラー特別科目
遺伝カウンセラー コミュニケーション概論
コミュニケーションという観点から、遺伝カウンセリングの重要なテーマについて、院生自身が主体となってディスカッションを行い、互いの学びを共有していく。遺伝カウンセラーとして、クライエント・家族の支援のためのコミュニケ-ションは勿論のこと、チーム医療のメンバーとして、異なった専門性を持つチームメンバーとのコミュニケーションのあり方についても学ぶ。また、『遺伝カウンセリングロールプレイ演習』 『遺伝カウンセリング実習(病院での臨床実習)』で必要な基礎知識・理論を学ぶという役割も担っており、これらの講義・演習・実習を通して遺伝カウンセリング、そして遺伝カウンセラーについて学びを深めることを総合的な目標として掲げている。演習については、授業の進行状況に応じて、ロールプレイ、ビデオ学習など様々な方法を用いる。
集中講義
演習科目
基礎人類遺伝学演習
遺伝カウンセラーとして必須である家系図の作成、遺伝医療情報の収集、説明資料や記録の作成、染色体検査・遺伝学的検査の結果解釈などについて、演習を通じで体験することにより、具体的に理解することを目的とする。また、臨床の現場で行われる出生前診断、遺伝性腫瘍の画像診断やサーベイランスの実践についても学習する。
臨床遺伝学演習(ロールプレイ演習)
頻度の高い疾患の模擬症例をもとに、遺伝カウンセリングのロールプレイを実施する。疾患に対する十分な知識を習得するとともに、遺伝カウンセリングの構造・流れを適切につかみ、主訴・経緯の確認からアジェンダセッティング、疾患の説明および意思決定支援と、全体を通じてカウンセリングマインドをもって対応できることを目指す。ロールプレイ当日は教員やメンター、オブザーバーからフィードバックを受け、後日教員・メンターと共に振り返りを行い、臨床遺伝学の知識と遺伝カウンセリングの基本的技術を習得する。
遺伝カウンセリング演習1・2(遺伝カウンセリング合同カンファレンス)
実際の遺伝カウンセリング症例を提示し、遺伝的問題、医学的問題、療養問題、社会的問題、法的問題、倫理的問題、心理的問題などについて、他の学内からのカンファレンス参加者とともに、徹底的な討論を行う。すなわち、臨床遺伝専門医・指導医、同制度研修医、臓器別診療科専門医師、看護師、臨床心理士、ケースワーカー、医学研究者、その他の様々な立場と観点から行われる集中的な討論(ディベート)に参加する。これによりチーム医療としての遺伝医療の現場における問題点を知る。1年次学生も後期からは、実際の遺伝カウンセリング実習で体験した症例について、自ら提示を行い、カンファレンスを中心的に運営する。これは、京都大学と近畿大学の遺伝カウンセラーコースのカリキュラムの中で最も重要なものであり、両大学の院生が積極的に参加するものである。
最後50 分程度で、京大・近大遺伝カウンセラーコースの修了者による遺伝カウンセラーとしての活動などに関するプレゼン、あるいは合同カンファレンス出席者等によるレクチャーを行う。
遺伝カウンセリング実習
遺伝カウンセリング実習1・2
1年次の10月から遺伝カウンセリング実習を開始する。学生個人個人の知識・到達度や実習のavailabilityから判断して、実習の頻度を決定する。2年間で60症例程度を経験する。遺伝カウンセリング実習への参加にあたっては、疾患について十分に予習を行い、担当の教員ならびに認定遺伝カウンセラーと事前打ち合わせを綿密に行い、疑問点を解消するとともに、遺伝カウンセリング当日のそれぞれの役割を決めておく。ごく初期は同席のみであるが、できるだけ実際の遺伝カウンセリングに積極的に参加することが望まれる。具体的には情報提供資料の作成、主訴の確認、病歴や家系図の聴取、疾患概要や遺伝形式に関する情報提供、遺伝学的検査の説明、電話フォローアップなど、個々のケースに応じて積極的に参加する。遺伝性腫瘍、神経変性疾患、出生前診断、染色体異常、遺伝性難聴、遺伝性循環器疾患、眼科疾患、先天奇形、その他、できるだけバラエティに富んだ疾患の症例の経験をするようにつとめる。
京大病院遺伝子診療部受診案内社会健康医学系専攻コア科目・選択科目
社会健康医学系専攻HPの「時間割・シラバス」を参照ください。
http://www.pbh.med.kyoto-u.ac.jp/syllabus.html
課題研究
遺伝医学・ゲノム科学・遺伝カウンセリングなど関連領域についての具体的な課題への取組である課題研究も遺伝カウンセラーコースの必須である。研究課題の探索・設定、方法や対象の検討、研究の実施、研究結果の解析・解釈、研究報告書の作成、研究のプレゼンテーションを経験し、具体的問題解決能力を向上させる。