2026年2月現在、遺伝カウンセラーは45か国以上の国で活躍しており、30か国以上の国で遺伝カウンセラーの教育が行われている。
➡ アメリカ合衆国
遺伝カウンセラーの養成は1967 年にサラ・ローレンス校で始まった。その後、養成コース数は増加し続け,2026年2月時点で60コース存在する。その中にはオンラインのコースも含まれている。American Board of Genetic Counselingの認定を受けた遺伝カウンセラーは7,300名以上(2024年9月時点)にのぼる。Professional Status Survey 2024によると、特定の専門領域で活躍する遺伝カウンセラーは39%を占め、周産期、小児、腫瘍、循環器、神経、眼科、精神科など、幅広い領域で活躍している。また、専門分野の違いに加えて、直接患者と対面しないポジションで活躍する遺伝カウンセラーも25%を占め、研究、教育、産業分野、マーケティングなど、医療および遺伝学の分野における多様な職種で活躍している。このように遺伝カウンセラーの活躍の場が広がっていることから、養成コースには、さまざまな特色がみられ、実習先に検査会社、政府機関、海外での臨床実習を選択できる養成コースも存在する。
➡ イギリス
イギリスにおける遺伝カウンセラーの養成は、2016年を境に大きく変わった。それまで、他国と同様に大学に設置された遺伝カウンセラー養成コースにおいて養成が行われていたが、2016 年からイングランドにScientific Training Programme(STP)が設置され、STPがイングランドにおける遺伝カウンセラー養成の中心となった。STP は,修士レベルの教育と病院での研修が組み込まれたフルタイム3 年間のプログラムであり,学費および給与は国から支給される。National School of Health Scienceの枠組みの中で遺伝カウンセラーを養成すること、また、出願時に就職先のNational Health Service施設のGenetic Serviceが決定していることも特徴である。各分野のGenetic Service に必要な遺伝カウンセラー数を国が試算し,高いレベルのClinical Scientist としての遺伝カウンセラーを計画的に養成する点が、最大の特徴である。
➡ オーストラリア・ニュージーランド
アメリカ、イギリスに並び、遺伝カウンセラー養成の歴史が古い国の一つであり、1989年より遺伝カウンセラーの養成が開始された。当初は3 年間の養成コースであったが,2005 年以降、修士レベルの2 年間のフルタイムのコースを養成課程の条件とするようになった。養成コース修了後は,Human Genetics Society of Australasiaの遺伝カウンセラー資格登録制度に「Member of the HGSA」(以前は“associate genetic counsellor”と呼称)として登録される。その後、2年以上の臨床経験を経て,ログブックやレポート等をHGSA Board of Censors for Genetic Counselling に提出し、「Fellow of the HGSA」(以前は“certified genetic counsellor”と呼称)として認定される。現在、オーストラリアにはUniversity of Technology SydneyおよびThe University of Melbourne の2 校に養成コースが設置されている。遺伝カウンセラーは、周産期、小児、腫瘍、循環器、神経、代謝など幅広い領域で活躍しており、臨床以外では、教育、検査ラボ、研究などの分野で従事する者も存在する。
➡ ヨーロッパ
European Board of Medical Genetics (EBMG)の遺伝看護師・遺伝カウンセラー部会が、遺伝カウンセリングにおける高品質なサービスを統一的に確保するとともに、遺伝カウンセリング教育を高い水準で推進することを目的として、遺伝カウンセラーの養成プログラムに対する欧州認定制度および遺伝カウンセラー個人に対する専門登録制度を提供してきた。EBMGより認定を受けた遺伝カウンセラー養成コースは、EBMGが推奨するコア・カリキュラムに準拠していることが保証されており、その内容には、カウンセリング技術、心理学的課題、医学およびヒト遺伝学、ゲノミクス、倫理・法・社会、実践的訓練、教育および研究に関するモジュールが含まれる。これまでに、2012年にはフランスのAix-Marseilles UniversityおよびポルトガルのUniversidade do Porto、2021年にはイギリスのUniversity of Glasgow、イタリアのUniversity of Siena、スペインのUniversitat Autònoma Barcelona、オーストリアのMedical University of Innsbruck、さらに2022年にはスウェーデンのLinköping Universityが、それぞれEBMGの認定を受けている。
➡ その他の地域
中東ではサウジアラビア、アフリカ大陸には南アフリカなど、アジアではフィリピン、マレーシア、シンガポールなどに、遺伝カウンセラー養成コースが設置されている。これらの養成コースは、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの養成コースを修了した遺伝カウンセラーが中心となって立ち上げられ、遺伝カウンセラーが養成されている。また、インド、台湾、韓国、香港にも遺伝カウンセラー養成コースが存在することが知られている。
日本では、日本人類遺伝学会、日本遺伝カウンセリング学会が合同で認定した「臨床遺伝専門医」の制度が平成14年より始まっており現在2074名が認定されている。これまで遺伝カウンセリングは医師によってのみ行われていることが多く、しかも通常診療科との兼務のため、遺伝カウンセリングを必要としている人に対し十分な時間をかけて対応できない。あるいは、遺伝カウンセリングを必要とする人が、遺伝カウンセリングを行っている医療機関の情報を入手できないといった状況が生まれていた。
厚生労働省では「遺伝子医療の基盤整備に関する研究」分担研究「認定遺伝カウンセラーの養成と資格認定に関する研究」班は、日本遺伝カウンセリング学会・日本人類遺伝学会とともに、医療専門職として非医師の「遺伝カウンセラー」を導入するために、人材育成の到達目標を検討し、平成17年度より、認定遺伝カウンセラー制度委員会により認定遺伝カウンセラー認定試験が開始された。平成15年より、信州大学医学研究科と北里大学医療系研究科の修士課程に養成課程が開始されている。
現在では認定された遺伝カウンセラー養成専門課程は29校、現在認定資格をもつ認定遺伝カウンセラーは463人となっている。今後も毎年40-50人が認定されると見込まれている。
京都大学と近畿大学では平成18年度より学生募集を開始しているが、京都大学では本邦でもいち早く平成8年より医学部附属病院に遺伝子診療部を設置し、遺伝カウンセリングの患者数も最多のレベルであり、代表者が中心となって活動を支えてきた。実習の場として、本邦で最も充実していると考える。
このような状況から、本コースは、本邦における遺伝カウンセラー養成の中心的な役割を果たしている。
これまで主な遺伝カウンセリングの対象であった単一遺伝性疾患のみならず、将来的に需要が予想される、より幅広い領域を対象とする。多因子疾患感受性遺伝子および薬剤代謝関連遺伝子の解析によるテーラーメイド医療の現実化に伴って爆発的に需要が見込まれる領域についても対応が可能な遺伝カウンセラーを養成する。





