京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

薬剤疫学

われわれの研究室は、多様なバックグランドの研究者や学生たちが、
臨床現場や社会、産業の疑問に根ざした
さまざまな研究を行っている、非常にユニークな集団です。

  • 川上 浩司教授
  • 教授: 川上 浩司
  • Koji Kawakami, M.D., Ph.D., Professor

概要

  • 健康解析学講座 薬剤疫学分野
  • 教授:川上 浩司、田中 佐智子(デジタルヘルス学講座特定)
  • 准教授:竹内 正人
  • 講師:佐藤 泉美(特定)、吉田 郁美(デジタルヘルス学講座特定)
  • 助教:関 知嗣、祐野 恵(政策のための科学特定)、深澤 俊貴(デジタルヘルス学講座特定)
  • TEL:075-753-9469(代)
  • FAX:075-753-4469
  • e-mail:info@pe.sph.med.kyoto-u.ac.jp
  • URL:https://kupe.med.kyoto-u.ac.jp/

私たちの研究室では、大規模医療系データベースを用いた臨床疫学、薬剤疫学研究といった臨床研究を中心として活動しています。

研究は、主として臨床医や薬剤師などの医療者が、それぞれの現場での疑問(クリニカルクエスチョン)を実施可能な研究デザイン(リサーチクエスチョン)としてテーマを設定し、教員の指導を受けて研究を実施、論文発表していくことになります。また、将来この分野の顕著な研究者を志す若手学生のサポートも全力で行います。

臨床疫学、生物統計学に造詣の深い多くの教員によるメンター制度のもと、主とし医療職の資格を持つ大学院生に対して、各種の医療リアルワールドデータを用いて、医療上の各種の疑問を解決するための臨床研究や、自治体由来の母子保健・学校健診情報を用いた予防医療のための疫学研究を実施しています。

また、電子カルテ由来の診療情報のデータベース(RWDデータベース)の構築や分析、自治体由来の母子保健や学校健診のデータベース(SHRデータベース)の構築や分析還元の事業に関心がある方は、大学院生をしながら事業に携わることもできます。

これらの領域は、日本における既存の疾患別臨床医学、基礎医学、医療薬学の枠内では研究業績も人材もまだまだ欠如しているため、私達の教室の活動や出身者は、近い将来、各所から極めて望まれるものとなるでしょう。

これまでの大学院生、教室員のバックグラウンドは、小児科、循環器内科、呼吸器内科、糖尿病内科、消化器内科、内分泌内科、腎臓内科、総合診療科、リウマチ免疫内科、腫瘍内科、消化器外科、麻酔科、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、眼科、救急診療、歯科、薬剤師、看護師、製薬企業(出向ふくむ)、新卒等です。

教室出身者からは、教授4名、准教授2名、大規模病院での部長、ナショナルセンターでの室長等の指導者が全国に輩出しています。

大規模データベースを用いた疫学研究

使用あるいは構築している医療系データベースは、電子カルテDB(図1。全国186医療機関、2000万人)、診療報酬請求レセプト情報(400万人)、DPC(2500万人)、調剤薬局情報統合(大手5社3500万処方箋相当)、母子保健情報(4万5000人)、学校健診情報(図2。全国150自治体、14万人)、介護入所時情報等です。

母子保健、学校健診情報を活用した予防医療にむけて

2015年より、教室では、(一社)健康・医療・教育情報評価推進機構(HCEI)およびリアルワールドデータ株式会社(RWD社)SHR事業部(旧:学校健診情報センター)との連携により、全国の自治体と連携し、学校健診情報(以下の図にあるように、全国約150自治体と正式に連携)を統合したデータベースを構築し、個人や地域に対する分析の還元と、パーソナルヘルスレコード(PHR)と呼ばれる、個人の携帯端末にて健診情報を保管できる仕組み(電子生涯健康手帳)の提供を実施しています。厚生労働省による項目標準化の開始に合わせて、2019年からは、乳幼児健診に関しても、データベースの構築および個人や地域に対する分析の還元を開始しました。

兵庫県神戸市などとの連携により、これまでも母子保健情報を活用した小児保健、予防医療の疫学研究を多数実施してきましたが、今後、全国規模で、-1歳から14歳までの15年間を紡いだデジタルコホートを用いた研究の展開を準備しています。

2018年の匿名医療加工情報に関する法律の施行にも関連して、今後は、人生の健康の歴史を紡ぐライフコースデータ(図3)の研究基盤を用いた予防医学の研究も実施していきます。

図1 提携医療機関数
図2 提携自治体数
図3 健康ライフコースデータ

所属するスタッフ、学生が現在実施している研究テーマ(一部)

  • 自治体の母子保健情報および学校健診情報を用いた児の発育に関する疫学研究(母子保健、学校保健)
  • 出生時アプガースコアと児の成長発達に関する疫学研究(小児科)
  • 妊娠高血圧症候群合併と児の神経学的予後に関する臨床疫学研究(小児科)
  • 小児急性虫垂炎診断のための画像診断の実施実態:保険レセプトデータベースを用いた記述疫学研究(小児科)
  • 小児急性中耳炎における抗菌薬適正処方に関する薬剤疫学研究(耳鼻咽喉科小児科)
  • 健診データを用いた生活習慣と成人の肥満発症の要因に関する研究(疫学)
  • 黄砂曝露による冠攣縮に惹起される心筋梗塞に関する疫学研究(循環器内科)
  • 慢性完全閉塞病変に対する待機的冠動脈インターベンションの適切性に関する記述研究(循環器内科)
  • 静脈血栓症を対象とした医療費請求情報の正確性に関する研究(循環器内科)
  • 慢性腎臓病に関する記述疫学研究(腎臓内科)
  • ANCA関連血管炎に関する疫学研究(腎臓内科)
  • ネフローゼ症候群患者を対象とした静脈血栓症に関する臨床疫学研究(腎臓内科)
  • 先端巨大症の疫学研究(内分泌内科)
  • がん既往のあるがん患者に関する疫学研究(腫瘍内科)
  • インフルエンザ治療薬の選択と予後に関する研究(感染症内科)
  • 梅毒患者の配偶者における梅毒検査実施に関する研究(感染症科)
  • 日本の外来患者でのパーキンソン病治療薬の処方実態に関する疫学研究(脳神経内科)
  • レビー小体型認知症の治療に関する調査研究(脳神経内科)
  • 医療情報データベースを用いた脳腫瘍の診療実態に関する研究(脳神経外科)
  • 妊娠期発症の急性虫垂炎に関する研究(消化器外科)
  • 周術期モニターの使用と術後短期予後との関連に関する研究(麻酔科)
  • レセプトデータベースを用いた小児MRI検査時鎮静の現状調査:過去起点コホート研究(麻酔科)
  • 消化器内視鏡治療の鎮痛鎮静におけるデクスメデトミジンの呼吸関連合併症リスク評価: 過去起点コホート研究(麻酔科)
  • 胃癌患者の術中全身麻酔法と予後に関する臨床疫学研究(麻酔科)
  • 院外心停止の心肺蘇生中におけるrSO2と神経予後に関する研究 (救急集中治療)
  • 地域包括ケア病棟におけるPoint of Careリハビリテーションの効果に関する疫学研究(リハビリテーション)
  • 緑内障患者における薬剤有害事象発生に関する薬剤疫学研究(眼科)
  • 小児気管切開患者に対する疫学研究(耳鼻咽喉科)
  • 嚥下障害患者の診療実態についての疫学研究(耳鼻咽喉科)
  • 関節リウマチ臨床試験におけるプラセボ効果に関する研究(薬剤疫学)
  • 新規発症成人部分てんかん患者に対する薬剤処方に関する研究(薬剤疫学)
  • 反事実モデルを用いた薬剤治療効果の推定に関する研究(薬剤疫学)
  • 抗菌薬施行時の制酸薬投与とClostridioides difficile腸炎に関する研究(薬剤疫学)
  • 抗癌剤による遅発性悪心嘔吐に対する制吐剤の疫学研究(薬剤疫学)

教室の2019年の主な業績から抜粋

  1. Masato Takeuchi, Masahito Ogura, Takaaki Minoura, Nobuya Inagaki, and Koji Kawakami. Comparative effectiveness of SGLT2 inhibitors vs other classes of glucose-lowering medications on renal outcome in type 2 diabetes. Mayo Clinic Proceedings, 95(2):265-273, 2020.
  2. Takeshi Kimura, Masato Takeuchi, and Koji Kawakami. Utilization and efficacy of palivizumab for children with Down syndrome. Pediatrics International, in press, 2020.
  3. Masanobu Ishii, Tomotsugu Seki, 他14名, on the behalf of JROAD Investigators. Short-term exposure to desert dust and the risk of acute myocardial infarction in Japan: A time-stratified case-crossover study. European Journal of Epidemiology, in press, 2020.
  4. Kayoko Mizuno, Masato Takeuchi, Yo Kishimoto, Koji Kawakami, and Koichi Omori. Indications and outcomes of pediatric tracheotomy: A descriptive study using a Japanese claims database. in press, BMJ Open, 2019.
  5. Hiroshi Yonekura, Kazuki Ide, Yuji Kanazawa, Chikashi Takeda, Yuki Nakamori, Yasunori Matsunari, Michihiro Sakai, Koji Kawakami, and Masataka Kamei. The use of preoperative haemostasis and ABO blood typing tests in children: A retrospective observational study using a nationwide claims database in Japan. BMJ Open, in press, 2019.
  6. Satomi Yoshida, Takeshi Kimura, Masahiro Noda, Masato Takeuchi, and Koji Kawakami. Association of maternal pre-pregnancy weight and early childhood weight with obesity in adolescence: A population-based longitudinal cohort study in Japan. Pediatric Obesity, in press, 2019.
  7. Maki Shinzawa, Shiro Tanaka, Hironobu Tokumasu, Daisuke Takada, Tatsuo Tsukamoto, Motoko Yanagita, and Koji Kawakami. Association of low birth weight with childhood proteinuria at age 3 years: A population-based retrospective cohort study. AJKD, 74:141-143, 2019.
  8. Masayuki Nakashima, Kazuki Ide, and Koji Kawakami. Laparoscopic versus open repair for inguinal hernia in children: a retrospective cohort study. Surgery Today, in press, 2019.
  9. Woo Jin Joo, Kazuki Ide, Yohei Kawasaki, Chikashi Takeda, Tomotsugu Seki, Tomoko Usui, and Koji Kawakami. Effectiveness and safety of early enteral nutrition for patients who received targeted temperature management after out-of-hospital cardiac arrest. Resuscitation, 135: 191-196, 2019.
  10. Chikashi Takeda, Masato Takeuchi, Yohei Kawasaki, Hiroshi Yonekura, Isao Nahara, Aki Kuwauchi, Satomi Yoshida, Shiro Tanaka, and Koji Kawakami. Prophylactic sivelestat for esophagectomy and in-hospital mortality: a propensity score-matched analysis of claims database. Journal of Anesthesia, 33(2):230-237, 2019.
  11. Sumihiro Kawano, Masato Takeuchi, Shiro Tanaka, Takehiro Yamashita, Taiji Sakamoto, and Koji Kawakami. Current status of late and recurrent intraocular lens dislocation: Analysis of real-world data in Japan. Japanese Journal of Ophthalmology, 63(1):65-72, 2019.
  12. Hiroshi Yonekura, Kazuki Ide, Yoshika Onishi, Isao Nahara, Chikashi Takeda, and Koji Kawakami. Preoperative echocardiography for patients with hip fractures undergoing surgery: a retrospective cohort study using a nationwide database. Anesthesia & Analgesia, 128(2):213-220, 2019.
  13. Tomotsugu Seki, Morio Aki, Hirotsugu Kawashima, Tomotaka Miki, Shiro Tanaka, Koji Kawakami, and Toshi A. Furukawa. Electronic health record nested pragmatic randomized controlled trial of a reminder system for serum lithium level monitoring in patients with mood disorder: KONOTORI study protocol. Trials, in press, 2019.
  14. Sachiko Kasamo, Masato Takeuchi, Masashi Ikuno, Yohei Kawasaki, Shiro Tanaka, Ryosuke Takahashi, and Koji Kawakami. Real-world pharmacological treatment patterns of patients with young-onset Parkinson’s disease: a medical claims database analysis. Journal of Neurology, 266:1944-1952, 2019.
  15. Shin Kawasoe, Kazuki Ide, Tomoko Usui, Takuro Kubozono, Shiro Yoshifuku, Hironori Miyahara, Shigeho Maenohara, Mitsuru Ohishi, and Koji Kawakami. Distribution and characteristics of hypouricemia within the Japanese general population: A cross-sectional study. Medicina, 55, 61; doi:10.3390/medicina55030061, 2019.
  16. Madoka Yamamoto-Sasaki, Satomi Yoshida, Masato Takeuchi, Sachiko Tanaka-Mizuno, Yusuke Ogawa, Toshiaki A. Furukawa, and Koji Kawakami. Association between antidepressant use during pregnancy and autism spectrum disorder in children: A retrospective cohort study based on Japanese claims data. Maternal Health, Neonatology and Perinatology, 5:1-7, 2019.