活動報告: 京都大学SPH国際レクチャー
「韓国におけるインターネット・ゲーム依存症への対応:公衆衛生と臨床的視点」
2026年2月16日午前、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻(KUSPH)にて、「韓国におけるインターネット・ゲーム依存症への対応:公衆衛生と臨床的視点」と題した国際レクチャーが開催されました。現地とZoomを併用したハイブリッド形式で実施され、約30名の学生および教員が参加しました。本講演では、韓国・カトリック大学校医学部精神医学講座のHae-Kook Lee教授をお招きし、思春期のデジタルメディア依存を中心に、公衆衛生学的視点からの包括的な理解と対応戦略についてご講演いただきました。
講演の前半では、思春期が発達上きわめて重要である一方、依存に対して脆弱な時期であることが強調されました。UNICEFやInternational Telecommunication Unionの国際統計を示しながら、多くの先進国において青少年のインターネット利用がほぼ日常化している現状が紹介されました。その上で、デジタルメディア利用は健全な関与から問題的・依存的使用まで連続体上に存在すること、過度な利用はサイバーいじめ、身体イメージの問題、衝動性の増大、認知機能への影響などと関連しうることが説明されました。
続いて臨床的概念整理として、ゲーム障害がWHOのICD-11において「嗜癖行動症群」として正式に位置づけられていることが解説されました。診断は、生物学的症状の有無ではなく、コントロール障害、生活上の優先順位の逆転、否定的結果にもかかわらない継続、そして臨床的に有意な機能障害に基づいて行われます。厳格な基準を適用した場合の有病率は約1~2%と推定されており、すべてのゲーム利用者を疾病化するものではないことが強調されました。
韓国における政策的対応の変遷も詳しく紹介されました。1990年代後半以降、学校でのスクリーニング、宿泊型治療キャンプ、全国的な予防センターの設置、いわゆる「シャットダウン制度」など、段階的な取り組みが行われてきました。近年ではスマートフォン過剰使用やSNS利用に対する規制へと政策対象が拡大し、2025年8月には小・中・高校の授業時間中におけるスマートフォン使用を全面的に禁止する法制度が成立したことが報告されました。
治療戦略としては、行動条件づけ型、情緒脆弱型、衝動型の三経路モデルに基づく個別化アプローチが提示されました。さらに、地域を基盤とする統合的支援モデル「K-SOC-DM(韓国型デジタルメディア・システムオブケア)」が紹介され、医療、心理、福祉、学校、家族を横断した連携と社会的処方を組み合わせることで、短期的な症状改善にとどまらない持続可能な回復を目指す枠組みが示されました。
質疑応答では、依存症に関する科学的エビデンス、日本と韓国を比較した場合の日本の政策への示唆、デジタルメディア利用に関する調査の回答率を高める方法などについて活発な議論が行われました。本講演は、デジタルメディア依存を個人の問題にとどめず、公衆衛生および政策レベルで包括的に捉える重要性を再認識する機会となりました。
