活動報告: 京都大学SPH国際レクチャー 孤独と社会的孤立に関する研究:課題と戦略
在校生
2025年09月16日
2025年9月10日午後、京都大学大学院医学研究科社会健康医学専攻(KUSPH)において、国際レクチャー「孤独と社会的孤立に関する研究:課題と戦略」が開催されました。
講師は、英国ダラム大学社会学准教授であり、JSPS BRIDGEフェローであるケミン・ヤン先生です。本講義は対面とオンライン(ZOOM)を併用したハイブリッド形式で実施され、京都大学の教員および学生約20名が参加しました。
ヤン先生はまず、現代社会における孤独と社会的孤立の重要性について概説しました。続いて、孤独の定義と類型(transient, situational, chronic, social, emotional, and existentialなど)を整理しました。
そのうえで、UCLA 尺度や De Jong Gierveld 尺度、英国国家統計局の指標や欧州孤独調査など既存の測定手法を検討し、それらの限界を指摘するとともに、「頻度・強度・持続時間」と文脈要因を組み込んだ新たな枠組みを提案しました。
次は、孤独が有害となる臨界点について論じ、「病理的孤独」を定義・診断するための枠組みを提示しました。また、英国における実践例として、地域の慈善団体や医療従事者を通じて個人を支援サービスへとつなげる社会的処方などのコミュニティ基盤型プログラムを紹介しました。
最後にヤン先生は、社会的つながりの促進だけでは十分ではないと指摘しました。孤独そのものに直接対応しなければ、一部の人々は見過ごされ、スティグマが残り続ける可能性があると述べました。政策は、孤独の削減と社会的つながりの促進の両方をバランスよく行う必要があると結論づけました。

