【ヘルスセキュリティセンター開設記念講演】 Prof. Gilbert Burnham Commemorative Lecture
2025年8月20日、米国のJohns Hopkins University Center for Humanitarian HealthからProf. Gilbert Burnhamを講師としてお迎えし、ヘルスセキュリティセンター開設記念講演「健康危機管理・人道支援のキャパシティ構築」が、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻(KUSPH)にて開催されました。Prof. Burnhamが20年以上の長年にわたり、アフリカや中東、アジア諸国において、健康危機管理や人道支援に関する活動や研究を行ってこられたご経験、Johns Hopkins University Center for Humanitarian Health において開発された健康危機管理および人道支援に関する教育プログラム(H.E.L.Pプログラム)など、多岐にわたる内容をお話し頂きました。
また、人道的緊急事態と世界的な備えを強化する大学の役割に焦点を当て、進化する健康安全保障の分野についてご教示頂きました。Prof. Burnhamは、内科、公衆衛生、人道支援における数十年にわたるグローバルな経験に基づき、より広範な公衆衛生と社会決定要因への対応なしには、臨床専門知識だけでは不十分だと強調されました。かつては災害管理という狭い枠組みで捉えられていた健康安全保障は、パンデミック、気候変動、公平性、そして国際協力を包含する分野へと拡大しているとのご説明がありました。
さらに、監視、備え、対応、そして回復力という重要な要素についても概説されました。COVID-19は、早期発見とワクチン開発の進歩を浮き彫りにする一方で、緊迫した状況下でのコミュニケーション、備え、そして保健システムの機能不全をも露呈させました。津波などの災害は、インフラやサプライチェーンの機能不全がもたらす脆弱性をさらに浮き彫りにしています。気候変動は、健康安全保障に対する十分な対応がされていないものの、喫緊の脅威として強調されました。
専門家の育成、エビデンスの創出、そして技術的能力の構築において大学が果たす重要な役割や、アフリカと難民問題における現場経験から生まれたジョンズ・ホプキンス大学人道保健センターの設立経緯についてもお話しされました。同センターの3つの柱は、研究、人道支援団体への技術支援、そして教育です。画期的な取り組みの一つは、国際的なパートナーと共同で開発された教育プログラム「H.E.L.P:Health Emergencies In Large Populations」で、世界中で数千人の医療従事者を育成し、後にオンライン学習プラットフォームに拡大されました。
持続可能性と妥当性は、長期的なコミットメント、現地の関係者とのパートナーシップ、そして変化する危機への対応力にかかっています。影響力のある研究の例としては、シリアにおける透析の質、イラクやイエメンなどの紛争地域における死亡率、アフガニスタンにおける保健システムのパフォーマンスに関する研究などが挙げられます。これらの研究から得られた教訓は、人獣共通感染症予防のための文書化、政策への関与、そして獣医学を含む学際的な連携の重要性を示しています。
最後に、大学が最も永続的な貢献を果たすのは、新たな脅威に適応し、人道危機における協力、イノベーション、そしてレジリエンスを促進できる次世代の保健安全保障リーダーを育成することであると強調されました。
私たちは、グローバルな保健安全保障と人道的緊急事態の文脈において、Prof. Burnhamとの協力をさらに拡大していきます。
