社会疫学分野 井上浩輔准教授(白眉センター)とハーバード大学の研究チームは、米国における過去10年の糖尿病コントロールの推移を明らかにし、JAMA誌に発表しました。
今までの研究により、COVID-19パンデミックにおける医療アクセスの制限や生活習慣の変化が疾患の診断やコントロールに影響を与えることは示されてきましたが、糖尿病の頻度やコントロールが実際どの程度変化したかについては明らかでありませんでした。本研究では、2013年から2023年にかけての米国成人の糖尿病の有病率と血糖コントロールの時系列トレンドを評価しました。結果として2013年から2023年の間に成人の糖尿病の有病率は大きく変わらなかったものの、糖尿病患者における良好な血糖コントロールの割合は2021-2023に低下しており、特に若年成人でその傾向は顕著でした。
本研究で認められた糖尿病患者における血糖コントロール不良には、パンデミック禍の運動量の低下、社会的支援の減少、心理的ストレスの高まり、そして医療および薬剤へのアクセスの制限といった理由が考えられます。今後特に若年層を意識した糖尿病コントロールの向上を目指すうえで、本研究結果が重要なエビデンスになることが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「JAMA」(オンライン)に、2月28日(水)(日本時間)に公開されました。
Inoue K, Liu M, Aggarwal R, Marinacci LX, Wadhera RK. (2025) Prevalence and Control of Diabetes Among US Adults, 2013 to 2023.
リンク:
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2830895
京都大学プレスリリース:
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-02-28-0