京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

薬剤疫学分野の桝田崇一郎客員研究員、深澤俊貴特定講師、川上浩司教授と整形外科学の松田秀一教授の研究グループが、透析患者におけるデノスマブとビスホスホネートの比較研究をAnnals of Internal Medicine誌に発表しました。

一般 2025年01月10日

透析患者は骨粗鬆症の罹患率が高いにも関わらず、大規模な臨床試験の実施が困難であることから、これまで最適な治療法に関するエビデンスが限られていました。医学研究科薬剤疫学分野の桝田崇一郎 客員研究員、深澤俊貴 特定講師、川上浩司 教授と整形外科学の松田秀一 教授の研究グループは、DeSCヘルスケア株式会社が保有する電子レセプトデータを用いて、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブと経口ビスホスホネートの骨折予防効果と心血管リスクを比較する観察研究を実施しました。

本研究では、可能な限り臨床試験を模倣する「標的試験エミュレーション」という最新の観察研究の枠組みのもと、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブと経口ビスホスホネートの有効性並びに安全性を比較しました。結果として、デノスマブは経口ビスホスホネートと比較して、骨折リスクを45%低減させる一方、心血管イベントのリスクを36%増加させる可能性が示されました。

本研究は、透析患者の骨粗鬆症に対してデノスマブが骨折予防に有効である一方、心血管イベントのリスク増加の可能性があることを明らかにしました。しかし、ベースラインの腎機能や骨密度など、未測定の交絡因子の影響を排除できないため、これらの結果には不確実性が伴います。より確実なエビデンスを得るためには、さらなる大規模研究や臨床試験が求められます。

本研究成果は、国際学術誌「Annals of Internal Medicine」(オンライン)に、2025年1月7日に公開されました。
 
Soichiro Masuda, Toshiki Fukasawa, Shuichi Matsuda, Koji Kawakami (2024). Cardiovascular Safety and Fracture Prevention Effectiveness of Denosumab Versus Oral Bisphosphonates in Patients Receiving Dialysis: A Target Trial Emulation. Annals of Internal Medicine. doi: 10.7326/ANNALS-24-03237

 
京都大学プレスリリース:
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-01-08-0