社会疫学分野 井上浩輔准教授(白眉センター)らの研究チームは、配偶者が心血管疾患(CVD)を発症したのちに、本人の認知症リスクが上昇することをJAMA Neurology誌に発表しました。
これまでの研究により、CVDは認知症の発症に繋がる重要なリスク要因であることが報告されていました。一方で、個人のCVDがその家族の認知症のリスクにどの程度影響しているかについては明確な検証がされていませんでした。本研究では、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する世帯主(被保険者)とその被扶養者を対象とし、被扶養者のCVD発症(脳卒中、心不全、心筋梗塞)の有無における世帯主の認知症診断のリスクの変化を比較しました。その結果、被扶養者がCVDを発症した家庭では、そうでない(被扶養者がCVDを発症していない)家庭と比べて、世帯主が認知症の診断を受けるリスクがより高く認められました。
本研究結果は、配偶者がCVDを発症した際に、そのパートナーの認知症発症に対するモニタリングを提供する重要性を示唆しています。認知症は現在では治療手段が限られているため、早期発見や予防が重要です。患者本人の健康状態のみならず、世帯全体を意識したケアを提供することは、認知症への対策において重要な視点となる可能性があります。このような家族単位での健康に着目した研究は世界的に見ても限られているため、更なる知見の創出と効果的な施策の開発が求められます。
本研究成果は、国際学術誌「JAMA Neurology」(オンライン)に、8月27日に公開されました。
Toshiaki Komura, Yusuke Tsugawa, Elizabeth Rose Mayeda, M. Maria Glymour, Kosuke Inoue (2024). Association of Cardiovascular Events With Spouse’s Subsequent Dementia. JAMA Neurology.
責任著者:井上浩輔
リンク:
https://doi.org/10.1001/jamaneurol.2024.2612
京都大学プレスリリース:
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2024-08-27