京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

社会疫学分野 井上浩輔准教授(白眉センター)・近藤尚己教授らの研究チームが、配偶者の心血管疾患(CVD)と本人のうつ病発症リスクの関連を検討し、JAMA Network Open誌に発表しました。

一般 2024年04月16日

これまでの研究により、個人レベルではCVDとうつ病には様々な関連が存在することが報告されていました。一方で、個人のCVDがその家族のメンタルヘルスにどの程度影響しているかは明確な検証がされていませんでした。社会疫学分野の井上浩輔 准教授、近藤尚己 教授とボストン大学の古村俊昌 修士学生、UCLAの津川友介 准教授らの研究グループは、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する世帯主(被保険者)とその被扶養者を対象とし、被扶養者のCVD発症(脳卒中、心不全、心筋梗塞)の有無における世帯主のうつ病リスクの変化を比較しました。その結果、被扶養者がCVDを発症した家庭では、そうでない(被扶養者がCVDを発症していない)家庭に比べて、世帯主のうつ病リスクがより高く認められました。また、被扶養者の発症したCVDがより重症である場合、世帯主のうつ病リスクがより高くなることが示されました。

本研究結果は、配偶者がCVDを発症した際に、そのパートナーに対してメンタルケアを提供する重要性を示唆しています。予防医療が注目を浴びる近年において、患者本人に加えて患者の家族を意識したケアを提供することは重要な視点となる可能性があります。このような家族単位での健康に着目した研究は世界的に見ても限られているため、更なる知見の創出と効果的な施策の開発が求められます。

本研究成果は、国際学術誌「JAMA Network Open」(オンライン)に、4月13日(土)(日本時間)に公開され、広くメディアで報じられました。

Komura T, Tsugawa Y, Kondo N, Inoue K. Depression Onset After a Spouse’s Cardiovascular Event. JAMA Netw Open. 2024;7(4):e244602-e244602.
責任著者:井上浩輔

リンク:
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2817482
掲載メディア例:
https://www.asahi.com/articles/ASS4B3JHYS4BPLBJ00DM.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/3ad6b7c7fd3134461d5bbf4efb02571797030553