アジア太平洋地域における平均余命相当年齢(プロスペクティブ・エイジング)と新たな人口動向
活動報告: 京都大学SPH国際レクチャー
アジア太平洋地域における平均余命相当年齢(プロスペクティブ・エイジング)と新たな人口動向
2024年1月23日午後、京都大学大学院医学研究科社会健康医学専攻(KUSPH)にて、「アジア太平洋地域における平均余命相当年齢(プロスペクティブ・エイジング)と新たな人口動向」をテーマに国際レクチャーが開催されました。約15名の学生と教員が参加し、会場とZOOMのハイブリッド形式で行われました。
香港科技大学社会科学・公共政策学部教授で、リーダーシップ・公共政策エグゼクティブ教育プログラム・アソシエイト・ディレクターのスチュアート・ギーテル・バステン教授と、京都大学大学院医学研究科連携大学院講座客員教授の森臨太郎教授をお招きしました。今回の国際レクチャーは、高齢化について議論することを目的に行われました。
まず、ギーテル・バステン教授が高齢化の動向について説明しました。高齢化は世界的な課題であり、近い将来、アジアが高齢化の中心になることが予想されます。また、国によって制度が異なるため、介護保険などの制度を輸出入する必要があると述べました。
昨今、高齢化はネガティブなもので、どうすることもできないというイメージがあります。しかし本来、長生きすることは人間の成功の象徴であり、ポジティブに捉える方法を探ることで高齢化の良い点がいくつも見えてきます。例えば、高齢者が若返る傾向にあり、平均余命が延びていること、年齢そのものに意味がないため高齢者に明確な区切りはつけられないこと、寿命が延びるに従って高学歴者が増え、各世代の能力が向上すること、テクノロジーの進歩により、身体が弱くても働けるようになること(ジェロン・テクノロジー)、第2次人口配当がシルバー経済を活性化させることなどが挙げられました。
講演の最後に、ギーテル・バステン教授は、公衆衛生やライフコース・アプローチに興味があるのであれば、年齢や専門分野を超えて、人口統計学的な議論に関心を持って欲しいと勧めました。
講演の後、少子化、男女格差、世代間格差、教育、財政問題、国際比較などのテーマで活発なディスカッションが行われました。最後に、森教授はこれからの世界を形作るものについて考えるためには、人口統計に関する視点が重要だと述べました。また、人や人口ではなく、社会システムが問題だという批判的思考が必要であり、より良い社会を作るためにはシステムを変える必要があると述べ、国際レクチャーを結びました。