京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

医療倫理学

多様な生が集う「パブリック」の倫理
医療や科学、政策をめぐるコンセンサスや規範のあり方を考える

  • 教 授/井上 悠輔
  • Yusuke Inoue.
    Ph.D., M.P.H., Professor

概要

今日、「倫理」は、患者さんや医療の担い手にとどまらず、研究開発の現場、社会における知識・情報の発信・報道、そして国における政策の決定や運用において、重要(かつ厄介!)なキーワードとなっています。また、国内外での企業活動、産学連携の現場においても「倫理」への対応は一層重要な課題になっています。
本分野は、医療・医科学、公衆衛生の倫理・法・社会課題に関心がある人をお待ちしています。医療をめぐる意思決定、身体や生命をめぐる探究、政策のあり方など、関心があるテーマをより掘り下げたい、社会の動きを捉えて形にしたい、より良い社会に向けた提案したい、そのような熱い気持ちを持つ人を歓迎します。
論文講読や調査手法の習得に意欲のある方であれば、系の文理は問いません(教員の井上も文系学部の出身者です)。

研究・教育について

教育(コースワーク)の内容

  • 医療・医科学や公衆衛生の「倫理」を研究テーマとして検討したい人はもちろん、医療・研究に関する倫理問題を考えるための入門・応用に関する教育にも注力します。
  • コア科目(「基礎医療倫理学」)の他、各論を担当しています。
  • その他、リレー講義や他の講義シリーズにおける話題提供を担当しています。

具体的な研究項目

この分野にはさまざまな属性・視点の方の参画が見込まれます。基本的には、個人の問題意識が重要ですが、それが「研究」として展開できる内容になっていることも重要です。方法論と知識を身につけつつ、実際の問題に取り組む問題意識とやる気をもって臨んでください。
大きなテーマとして、以下のようなものが例示されますが、「倫理」の検討対象はこれらに限られるものではありません。具体的なテーマはみなさんの進路や興味関心に応じて相談して決めることになります。

  • 「先端医療」、医科学の倫理
    先端的な医療とは、すなわち未確立の医療でもあります。知識の蓄積や発信に伴う倫理問題を考えます。
  • 公衆衛生・疫学の倫理
    公的事業に伴う人権問題、医療資源配分など、個人の利益・恩恵の最大化のみでは解決できない課題を考えます。
  • 医療・健康データ、人体組織の活用の倫理
    バイオバンクや疾患レジストリなど、今日の医科学のインフラを支える倫理問題のあり方を考えます。
  • 医の倫理や制度の展開
    今日の課題を考える際に、文化的・歴史的な視点も不可欠です。

※詳細は専攻パンフレットもご参照ください。


医療AIの将来展開と医師患者関係を考える教材の検討(一部)
(大阪保険医雑誌2024:4;12-16.)

パンデミック下における地方自治体「コロナ人権条例」の調査
(年報医事法学2021:36;65-73, 医事業務2021:607;16-20.)

過去の日本の事例に学ぶ研究倫理入門
(日本評論社、2018年)

キメラ胚研究をめぐる市民と研究者の意識
(Cell Stem Cell 2016:19(2);152-153)