社会疫学分野 佐藤豪竜助教らの引退と心疾患リスクに関する論文がInternational Journal of Epidemiology誌に掲載されました
一般
2023年05月23日
京都大学大学院医学研究科社会疫学分野の佐藤豪竜助教、近藤尚己教授、井上浩輔准教授らの引退と心疾患リスクに関する論文が掲載されました。
多くの既存研究は、高齢者の就労継続が健康に良いことを示唆していました。しかし、既存研究では、健康な人ほど就労継続しやすいというバイアスが十分に考慮されていない可能性があります。本研究は、日本を含む35か国の50~70歳の106,927人を約6.7年追跡し、引退と心疾患リスクの関連を調べました。因果推論の手法を用いてバイアスを取り除いた結果、引退した人は、働き続けている人よりも心疾患リスクが2.2%ポイント低いことが初めて明らかになりました。また、引退した人は、身体不活動のリスクが3.0%ポイント低いことも示されました。
現在、各国で年金の支給開始年齢の引上げや高齢者の就労継続支援が行われていますが、本研究の結果は、引退の遅れは必ずしも健康には良くないことを示唆しています。働く高齢者が増える中で、運動などの健康づくりがますます重要になると考えられます。
本研究成果は、疫学分野のトップジャーナルである「International Journal of Epidemiology」(オンライン)に、5月8日(月)に公開されました。
論文:Sato K, Noguchi H, Inoue K, Kawachi I, Kondo N. Retirement and cardiovascular disease: a longitudinal study in 35 countries. Int J Epidemiol. 2023 May 8:dyad058. doi: 10.1093/ije/dyad058. Epub ahead of print.