活動報告:京大SPH国際レクチャー:国際機関でのキャリアパス
2023年3月27日の午後に、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻(京大SPH)で「国際機関におけるキャリアパス」に関する国際レクチャーが開催されました。ハイブリッド形式で開催されたこの国際レクチャーには、京大SPHの学生約10名がオンサイトで出席し、さらにZOOMから約10名の学生が出席しました。WHO 西太平洋地域事務局 (WHO/WPRO) の 2 人の職員、Ms. April Siwon Lee および神田美希子先生に、公衆衛生分野において、国際機関で働くキャリアパスについて、それぞれのご経験を紹介して頂きました。この国際レクチャーの目的は、京都大学の学生が、公衆衛生分野の国際機関の職員として働くとはどのようなものか、また、公衆衛生分野で国際機関で働くためには、どのようなスキルや能力が期待されるかについて、理解を深めることでした。
最初に、神田美希子先生のご経験について、ご紹介を頂きました。神田先生は、臨床看護師としてのキャリアをスタートさせ、公衆衛生の博士課程在籍中に、WHO 本部とスイスのジュネーブにある国際看護師評議会でインターンシップを行う機会を得られました。これらの経験により視野が広がり、国際機関で働くことがどのようなものかを実体験として知ることができたとのご紹介がありました。その後、アジア太平洋保健システムと政策に関する国際機構(Asia Pacific Observatory on Health Systems and Policies)でジュニアプロフェッショナルオフィサー(JPO) としてのキャリアを継続された後、WHO インド事務所およびUN AIDS のミャンマー事務所で看護および助産の技術担当官を務められました。そして2023年3月からは、WHO/WPROに着任されておられます。神田先生からは、国連機関で働くことの価値、機会、課題について、ご紹介頂きました。
次に、Ms. April Siwon Lee のご経験について、ご紹介頂きました。Ms. Leeは韓国のご出身で、幼少期はアジアと中東のさまざまな国で過ごされました。カナダの大学で学び、カナダのSocial Enterpriseでのキャリアをスタートされました。その後、公衆衛生の分野で働くための視野をさらに広げるべく、マラウイ、ナイロビ、上海でプロジェクトに従事されました。その後、マニラに移り、フィリピンでの研究プロジェクトに従事した後、現在はWHO/WPROで働かれています。Ms. Leeは、国際レクチャーに参加した学生に、まずはなんでもよいので国際的な公衆衛生の分野で有給で働く機会を見つけることが重要であると説明しました。実務経験を積むことで、国籍や文化的背景、才能、専門性が異なる専門家からなるチームで働くために必要な力やコミュニケーション力などがそなわり、それが個人の強みやスキルとして、さらに次の仕事につながるということを教えて頂きました。
国際レクチャーの後半では、ゲストスピーカー2名(Ms. April Siwon Lee、神田美希子先生)と京大SPH社会疫学分野の近藤尚己教授が対談しました。パネルディスカッション形式で、国際機関で働きたい人に求められる重要な能力・スキルとは?と題して、様々な点についてのディスカッションが行われました。参加した学生からは、WHOや他の国連機関でのインターンシップへの応募方法、WHOで働くには博士号が必要かどうか、国連機関で働くことを希望する者には、どのようなスキルや能力が求められるかなど、さまざまな質問がありました。
最後に、Ms. April Siwon Leeと神田美希子先生からは、インターンシップや海外でのフィールド調査など、小さな一歩から始めて社会人としての経験を積み、グローバルヘルスの分野で研究を行うことが重要とのメッセージがありました。このような経験により、WHOや他の国際機関で働くために必要なスキルと能力を開発する機会がえられるとの説明がありました。