京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

桂守弘氏(医療疫学分野MCR卒業生)、多田昌史氏(健康増進行動学分野DrPH3回生)が、McMaster大学Kovic研究員、McMaster大学Guyatt教授、McMaster大学Xie教授らと共同で行った、抗がん剤の臨床試験におけるprogression-free survivalとQOLの関連を検討した系統的レビューが JAMA Internal Medicine(IF=20.0)に掲載されました。

一般 2018年10月04日

抗がん剤の臨床試験における真のエンドポイントは、overall survival(OS)とhealth-related QoL(HRQoL)とされています。progression-free survival (PFS)は代替エンドポイントとされていましたが、近年では主要エンドポイントとして広く用いられるようになりました。しかし、PFSが改善しても必ずしもOSは改善しない事が既に知られています。また、抗がん剤の治療中は副作用によってHRQoLが損なわれやすく、PFSとHRQoLの改善の関連は決して自明なものではありませんが、両者の関連には未だ結論が出ていません。これではがんの患者さんは治療によるメリットが無いのに有害で高価な抵がん剤の治療を受けている可能性があります。そこで我々は、抗がん剤の臨床試験におけるprogression-free survivalとHRQoLの関連について系統的レビューを行いました。

18人(9ペア)の多国籍チームによって、2000年〜2016年に出版された約3万本のがんの臨床試験をスクリーニングし、52本の論文(12種類のがんに対するRCT 38本、総患者数 13979人)を包含しました。PFSとHRQoLとの回帰係数は、global HRQoLで0.12(95%CI, -0.27 to 0.52)、physical HRQoLで-0.20(95%CI, -0.62 to 0.23)、emotional HRQoLで0.78(95%CI, -0.05 to 1.60)でした。

本研究の結果、PFSとHRQoLの間に有意な関連を見出す事ができませんでした。これは今後の抗がん剤の臨床試験のデザインについて重要な示唆を与え得ると思われます。例えば、PFSを主要エンドポイントとする抗がん剤の臨床試験は、HRQoLも評価できるようにデザインされるべきかもしれません。

Bruno Kovic, Xuejing Jin, Sean A Kennedy, Mathieu Hylands, Michał Pędziwiatr, Akira Kuriyama, Huda Gomaa, Yung Lee, Morihiro Katsura, Masafumi Tada, Brian Y Hong, Sung Min Cho, Patrick Jiho Hong, 
 Ashley M Yu, Yasmin Sivji, Augustin Toma, Li Xie, Ludwig Tsoi, Marcin Waligora, Manya Prasad, Neera Bhatnagar, Lehana Thabane, Michael Brundage, Gordon Guyatt & Feng Xie (2018) Is progression-free survival a valid surrogate outcome for health-related quality of life in oncology? A systematic review and quantitative analysis. JAMA Internal Medicine.