2023年度の卒業生の声
荒井 滉士郎
臨床統計学講座
臨床統計家育成コースに関心をもっている方のバックグラウンドは、医療職としての経験を有する方、数学やプログラミングが得意な方、統計学を他の応用分野で勉強したことのある方など様々だと思います。
私は経済学部を卒業後、そのまま当コースに進学しました。学部時代は、統計学に関心があり、計量経済学のゼミに所属しておりました。当コースを知ったきっかけを明確には覚えていませんが、いつのまにか広告で見かけて、やがて関心をもつようになっていました。学部時代は、進路として計量経済学と臨床統計学のいずれを学ぼうかと迷っていました。当コースに進学を決めた主な要因は、専門家を育成するためのカリキュラムが充実していることでした。
当コースは公衆衛生大学院の中に設置されており、疫学などの公衆衛生学のコア領域を学ぶことができます。講義内では、グループワークで他分野に所属する医師や医療関係者の方々と関わる機会があります。例えば、「臨床試験」という講義では、仮想的な臨床試験のプロトコールを一から作成する実習があります。臨床統計学の専門家として臨床試験の計画段階から参画し、そのコンセプトを次第に具体化させていくイメージを肌で感じることができました。その他、臨床統計家として、統計学以外に身に着けるべき「行動基準」や「実務スキル」を自分の頭で考えながら涵養できるカリキュラムになっています。非医療系学部出身の方は、基礎的な医学の講義を受けることができます。
進学後は、統計教育に熱い先生方や、学習をサポートしてくださる運営スタッフの皆さん、自分とは異なるバックグラウンドの同期や先輩、後輩などとの貴重な出会いがあると思います。その中で、これまでの統計学の知識や経験を臨床統計学の専門性へと昇華させたい方には、京都大学臨床統計家育成コースがおすすめです。
尾崎 達郎
臨床統計学講座
私は本学入学前に、理学部数学科に相当するところに所属しておりました。私が大学三回生のとき世界はコロナ禍になり、報道などで医療の重要性を痛感しました。加えて、学部で数学を学ぶ中で私が最も興味を持った分野は統計学でした。当時は進路に悩んでおり、統計学が学べる大学院を探し回っていたことを鮮明に覚えています。そこで統計学を医学の分野に応用した臨床統計学という分野があることを知ったのが臨床統計家育成コースへの入学を決断するきっかけとなりました。
入学前、私は疫学や公衆衛生といった知識は院試勉強で教科書から得た知識程度しかありませんでした。いざ入学してみると周りは医療従事者(医者,薬剤師,看護師など)が多く、授業中のディスカッションで出てくる専門用語や医療者間で共有されている知識などに付いていけず最初は戸惑いました。しかし悩むのも束の間、気づけばその環境に順応し,医療従事者同士の議論をこんな間近で聞けるのは贅沢だなと思いながらディスカッションを楽しんでいました。逆に、私が統計学を彼らに教える機会もありました。その際「統計学ではそう考えるんだね」「わかりやすい説明をありがとう」など言われると嬉しく感じました。お医者さんから感謝されるのは臨床統計家のやりがいであるとよく聞きます。臨床統計の研究室がSPHに設置されていなければ私が感じている充実感や成果を得ることもなかったでしょう。
SPHの同期とは研究室や年齢の垣根を越えて食事に行くほど仲良くなることがありました。将来、一緒に臨床研究に携わることができれば素晴らしいと思い、そんな夢や計画を共有することもあります。SPHで築いたつながりや恵まれた環境を大切にし、これからも学び続けていきたいです。
本コースは日本に不足している生物統計家の人材を育てる目的で設置された背景があります。臨床統計を学ぶための教育や環境は日本一充実しています。統計学が好きでその専門性で人の役に立ちたい方、医療現場で過ごす中で統計学の重要性を感じた方など、ぜひ本コースへの進学を検討されてみてください。教員もスタッフもあなたの挑戦を快く応援してくれることでしょう!