京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

活動報告:京大SPH国際レクチャー:未来のヘルシー・エイジングについてのラウンドテーブルディスカッション

一般 2023年04月12日

2023年3月27日午前、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻(京大SPH)で「未来のヘルシー・エイジング」をテーマに国際レクチャーが開催されました。ハイブリッド形式で開催されたこの国際レクチャーに、京大SPHの学生・教員など約10名がオンサイトで出席するとともに、ZOOM経由で約30名が参加しました。WHO 西太平洋地域事務局 (WHO/WPRO) の 2 名のオフィサーと、ブルネイとカンボジアの研究者が、このイベントのゲストスピーカーとして招待されました。この国際レクチャーの目的は、WHO/WPRO が策定したヘルシー・エイジングの政策と行動計画の紹介、およびブルネイとカンボジアのヘルシー・エイジングに関する活動事例について学ぶことでした。

最初に、WHO/WPROのテクニカルオフィサーであるMs. April Siwon Leeが、WHO/WPROがヘルシー・エイジングの政策と活動を通じて達成しようとしていることの概要について講演を行いました。 西太平洋地域内のWHO 加盟国の多くでは、今後数年間で人口の急速な高齢化を経験する見込みです。したがって、各国は、健康的な高齢化を促進するための持続可能で実行可能な政策と行動計画を策定する必要があります。

「ヘルシー・エイジングに関する地域行動計画(Regional Action Plan on Healthy Ageing)」は、2020 年 10 月にWHO/WPRO加盟国により承認されました。このレポートでは、公平な視点を採用し、西太平洋諸国のWHO 加盟国の間で可能な限り既存のリソースを使用することを奨励し、未来志向の多部門的かつ生涯にわたるヘルシー・エイジングのアプローチを採用することが推奨されています。 この行動計画は、次5つの目標から構成されています。
1) 社会全体の変革
2) 医療制度の変革
3) 地域包括ケアの提供
4) 技術的および社会的イノベーションの促進
5)モニタリングと評価体制の強化

WHO/WPRO は、ヘルシー エイジングの政策と実践を自国の文脈に取り入れ、エビデンスを構築するための研究を促進することを計画している加盟国に、技術的支援を提供していることが紹介されました。また、事例共に、アドボカシーと知識共有活動にも力を入れていることの説明がありました。

続いて、カンボジア王立プノンペン大学の Sovandara Kao 先生とブルネイのRIPAS 病院の Shyh Poh Teo 先生から、それぞれカンボジアとブルネイにおけるヘルシー・エイジングの活動について報告がありました。 ヘルシー・エイジングに関するカンボジアの課題は、カンボジアには高齢者のための年金基金がないことです。このような状況のなか、いくつかの良い活動はコミュニティーセンターや仏教寺院を中心として行われています。また、家族が、カンボジアで高齢者の世話をする上で重要な役割を果たしていることの説明がありました。カンボジアのいくつかの州では、社会的処方(Social Prescribing)の活動のフィールドテストのモニタリングおよび評価が徐々に行われています。

ブルネイでは、複数の省庁や専門家が参加する委員会が形成され、ブルネイの高齢者をケアするための調和の取れた計画が作成され、実行されていることの説明がありました。その一例として、ブルネイにはオフショア住宅(海に住宅が浮かんでいるコミュニティー)が存在しています。このような環境では、入院した慢性症状のある高齢者が回復期に自宅に戻ることが困難であるため、ブルネイの高齢者の生活条件にはいくつかの環境上の課題があることが課題となっています。政府はオフショア住宅に住む人々の移転を計画しましたが、移転先として政府により用意された住宅は、階段のある2階建ての住宅で、歩行能力に支障のある高齢者にとっては生活が困難なことが判明しました。それらの経験を経て、ブルネイでは、さまざまな能力を持つ人々のためのガイドライン(guideline for people with different abilities)を作成し、配慮すべき点を纏めていることが紹介されました。

国際レクチャーの後半では、ゲストスピーカー4名(WHO/WPRO のMs. April Siwon Lee、神田美希子先生、カンボジア王立プノンペン大学のSovandara Kao先生、ブルネイのRIPAS 病院のShyh Poh Teo先生)と京大SPHの近藤尚己教授によるラウンドテーブルディスカッションが行われ、ヘルシー・エイジングの活動を各国で実施する上での課題について議論されました。議論されたトピックの1つとして、健康的なエイジングに関連する政策と活動を実施する際には、さまざまなステークホルダー間の協力を強化する方法が重要だという議論になりました。討論者は、さまざまなステークホルダーが関与する活動を可能にするために、トップダウンとボトムアップの両方のアプローチが必要であることに同意しました。
この国際レクチャーは、西太平洋地域の国々にヘルシー・エイジングの概念を広めることの重要性を認識すると共に、ヘルシー・エイジングに関する活動を拡大するためのキーワードはコラボレーションであることを確認して締めくくられました。