京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

知的財産経営学

ライフサイエンスの研究成果を社会に活かす
アントレプレナー、知的財産ディレクターを育成しています。

  • 教授: 早乙女 周子
  • 教授: 早乙女 周子

概要

我が国の経済力強化と人類の健康向上のため、日本発の革新的な医薬品・医療機器等の創出が望まれています。このようなメディカルイノベーションの実現には、大学等の基礎研究及び臨床研究から生まれる研究成果を産業界に繋げていくことが重要です。
そのために、大学の研究成果を知的財産として権利化し、産業界で最大限活用していくことができる知的財産マネージャー及びアントレプレナーが必要となります。我々は、ライフサイエンス分野の技術経営学教育のパイオニアとして、知的財産の「発掘」、「管理」、「活用」を担える人材の養成に貢献します。

知的財産経営学分野の特徴

特徴1:日本初のライフサイエンス分野の技術経営学、知的財産経営学のディグリープログラムである。
特徴2:大学の研究成果の活用に焦点を当てたプログラムである。
特徴3:基礎知識と実務的スキルの習得を目的としたプログラムである。
先端医学領域を中心とする医学、知的財産権(特に特許権)を中心とする法律、及びライフサイエンス産業を中心とするビジネスの知識の習得と実務的なスキル習得の教育を行っています。このことにより、先端医学領域での知的財産の発掘、管理、活用を担える知的財産マネージャー及びアントレプレナーを養成します。

研究・教育について

大学の技術シーズをもとに、ベンチャーを興し経営するには、これまでの日本の企業風土で蓄積された企業文化、経営のノウハウとは異なるものが要求されます。その1つが技術経営であり、特に知的財産を最大限に活用する知的財産戦略をになうマネージャー(知的財産マネージャー)の仕事です。
これからのベンチャー、特に医学領域におけるベンチャーは、先端科学技術を知的財産として集約し活用することが必要です。例えば、医薬化合物とDrug Delivery system、組織幹細胞等、分野を越えた知的財産の集約化によりはじめて、産業化が可能となるのです。単に、公開されている特許の活用を図るだけでは不十分であり、知的財産の創出、発掘の段階から、集約化をにらんだ知的財産発掘活動が必要です。このような戦略的企画能力を持つ人材(知的財産マネージャー)が大学側、ベンチャー企業側双方に配置されることが、大学の科学技術の産業化にとって極めて重要な課題です。その様な人材を育てる教育をします。
ここで期待される人材は、複数の異なるベクトルを持つ必要があります。自然科学特に先端医学領域、知的財産権を中心とする法律とビジネスに関する基礎知識、及び各々の分野での実務的スキルです。

1.自然科学

自然科学の分野は、医学部/医学研究科で提供されている講義を受講いただき、最先端の医学について習得してもらいます。
医学/生命科学関係の学部を卒業した学生でも医学を習得できるよう、医学基礎I, II, 臨床医学概論等の講義も提供されています。

2.法律

法律分野において、知的財産経営学分野の教員、及び外部から招聘した現役の弁理士により、特許法を中心とした知的財産法に関する講義、及び契約に関する講義を5科目10単位提供します。知的財産法に関する講義では、特許法の基礎的な知識から、特許明細書の作成等、実務的なスキルを習得します。契約に関する講義でも、契約に関する基礎的な知識を学習した後、契約交渉等の演習を通じて実務的なスキルを習得します。

3.ビジネス

ビジネス分野において、知的財産経営学の教員より、起業(アントレプレナーシップ)及びライフサイエンスビジネスに関する講義を4科目7単位提供します。それぞれの講義では、適宜、製薬企業やベンチャーキャピタル等から外部講師を招き、最先端のビジネスの現状等について学ぶ機会を提供します。またアントレプレナーシップの講義では、起業プロセスに関する基礎的な知識を習得した後、ビジネスプランを作成し、新規事業を興すために必要な思考プロセスを習得します。アントレプレナーシップ特論では、ビジネスゲームを通じて、実践的な管理会計の知識を習得します。

4.課題研究

2年次に行う課題研究は、医療分野における産学連携(大学発ベンチャー 等)、知的財産(バイオベンチャーの特許出願等)、医療ビジネス(医薬品のライフサイクルマネジメント等)に関わる諸課題をテーマに行います。テーマは、学生のバックグラウンドや興味、キャリア等を考慮して決定します。

5.インターンシップ

より実務的なスキルを習得することを目的として、希望者は学内外におけるインターンシップを行うことができます。インターンシップ先は、学内では、医学研究科の産学連携を行っている「医学領域」産学連携推進機構や、製薬企業との組織的産学連携を行っているメディカルイノベーションセンターと連携し、産学連携に関する様々な業務(特許出願、契約 等)を行います。学外組織としては、京都大学発ベンチャー等と連携し、知的財産マネジメント等の業務を行います。
>>詳しくは研究科サイトをご覧下さい。

研究業績

  1. Kiyoshi Seki, Hiroshi Suzuki, Seiji Abe and Chikako Saotome ”Lifecycle management of orphan drugs approved in Japan” Orphanet Journal of Rare Diseases (2022) 17: 299
    https://rdcu.be/cSFSP
  2. 早乙女周子 「バイオベンチャーの事業における特許出願の重要性」LES Japan News (2017) 58: 46-54
  3. Chikako Saotome, Yurie Nakaya, Seiji Abe, “Patent production is a prerequisite for successful exit of a biopharmaceutical company” Drug Discovery Today (2016) 21: 406-409
    http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1359644615004572
  4. 早乙女周子「組織的産学連携によるオープンイノベーション創薬の挑戦 京都大学におけるメディカルイノベーションの取組み」日薬理誌 (2014) 144: 28-33
  5. 早乙女周子、寺西豊、阿部誠二、ライフサイエンス分野における大学の知的財産活用と普及の在り方とは、日本知財学会誌 (2013) 10: 49-58
  6. Yukiko Hashitera, Chikako Saotome, Hirokazu Yamamoto, “Analysis of 10 years drug lifecycle management (LCM) activities in the Japanese market.” Drug Discovery Today, (2013) 18: 1109-1116

 


アントレプレナーシップ特論(ビジネスゲーム) 講義風景