京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

知的財産経営学

ライフサイエンスの研究成果を社会に活かす
知的財産ディレクターを育成しています。

  • 教授: 早乙女 周子
  • 教授: 早乙女 周子

概要

国立大学の法人化の動きなど、大学の使命も広がります。これまで教育と研究が主たる大学の使命でした。21世紀を迎え、社会の変化が世界的に起きています。世界での日本の位置づけも変わりました。研究面でも経済面でも先進国のトップに位置づけられています。フロントランナーとなり、真似をする先達がいなくなったにもかかわらず、精神的にはまだ生徒の気分のままでいるのが日本の現状です。
地球規模でパラダイムシフトが起こっています。その変化に対応するために、日本社会全体が大学に期待するところが大です。その現れが大学の使命の広がりを求める声です。基礎研究から生まれる先端科学技術を産業化につなぐ役割を担うことが新たに求められています。いわゆる大学の社会貢献です。
最近の生命科学の進捗は20世紀後半の人類の最大の成果です。生命科学分野の基礎研究から先端医学領域の科学技術を産業化につなぐ役割を、産官あげて大学に期待しています。
しかし、産業化へ繋ぐ役割を担える人材は極めて少なく、またこのような人材を積極的に養成するシステムが存在していませんでした。そこで、京都大学に産業化への橋渡しをする人材の養成講座を16年度から開講することにしました。

知的財産経営学分野の特徴

特徴1:日本初のライフサイエンス分野の技術経営学、知的財産経営学ディグリープログラムである
特徴2:大学発の知恵の活用に焦点を当てたコースである
特徴3:基礎知識と実務的スキルの習得を目的としたコースである
先端医学領域を中心とする自然科学、知的財産権を中心とする法律、及びライフサイエンス産業を中心とするビジネスの知識の習得と実務的なスキル習得の教育を行う。文部科学省が提唱する「大学ベンチャー1000社創出」に向け、バイオテクノロジー、特に先端医学領域での知的財産の発掘・管理・活用を担える人材(知的財産マネージャー)を養成する。知的創造サイクルの効率を上げるために必要な、先端医学領域の基礎知識及び技術情報の流通や実用化へのコンセプト(発見から発明へ)創造等、知的財産の取り扱いを中心とした技術経営の基礎知識と実務的スキルについても教育する。

研究・教育について

大学の技術シーズをもとに、ベンチャーを興し経営するには、これまでの日本の企業風土で蓄積された企業文化、経営のノウハウとは異なるものが要求されます。その1つが技術経営であり、特に知的財産を最大限に活用する知的財産戦略をになうマネージャー(知的財産マネージャー)の仕事です。
これからのベンチャー、特に医学領域におけるベンチャーは、先端科学技術を知的財産として集約し活用することが必要です。例えば、医薬化合物とDrug Delivery system、組織幹細胞等、分野を越えた知的財産の集約化によりはじめて、産業化が可能となるのです。単に、公開されている特許の活用を図るだけでは不十分であり、知的財産の創出、発掘の段階から、集約化をにらんだ知的財産発掘活動が必要です。このような戦略的企画能力を持つ人材(知的財産マネージャー)が大学側、ベンチャー企業側双方に配置されることが、大学の科学技術の産業化にとって極めて重要な課題です。その様な人材を育てる教育をします。
ここで期待される人材は、複数の異なるベクトルを持つ必要があります。自然科学特に先端医学領域、知的財産権を中心とする法律とビジネスに関する基礎知識、及び各々の分野での実務的スキルです。

1.自然科学

自然科学の分野において、医学研究科で先端医学領域の研究を実施している教員による講義において、トップレベルの科学的な知識を習得してもらいます。一方で企業の研究開発や、企画分野で深い経験をもつ人を講師として招き、ニーズ志向の研究開発のノウハウを習得してもらいます。さらに欧米のベンチャーでの研究開発や営業の実務経験のある人材や、実際に欧米のベンチャーとのライセンス交渉を担当してきた経験者を講師陣として迎え、ベンチャーを成功させるためにコア技術をどのようにして集めてきたか等を、実例に従って教育し実務的な知識や交渉のスキルなどを学べる特別のカリキュラムを組みます。

2.法律・ビジネス

法律・ビジネスの分野において、知的財産権6法やその他の基礎は、京都大学等の各専門分野から選ばれた教員の講義から知識を学ぶと共に、実業界でのキャリアを持つ講師(ベンチャーキャピタル分野)から、企業会計や実務的な知的財産の市場評価・流通の知識を学びます。これらの教育により、自然科学と法律・ビジネス、基礎と実務的スキルの各要素を併せ持った人材を養成します。

3.実務的スキル

実務的スキル向上に関して、14年度から設置された医学部産学連携オフィス、「医学領域」産学連携推進機構と連携を図りつつ、知的財産の発掘/管理の研修を実施します。実務研修の場としては、医学研究科のAKプロジェクトや附属病院探索医療センター等があります。ここから創製される知的財産を発掘・展開させ、さらに集約し利用する実務を通して、医薬開発のシステム全体を理解してもらいます。今後の先端医学領域で必要とされる科学技術の知識を把握することで、ベンチャー創出を担える知的財産マネージャーとしての生きた教育を実践します。

4.インターンシップ

さらに、一定の知識を習得した後、インターンシップ制度を取り入れて、京都大学をはじめとする各大学発のベンチャー企業で研修してもらいます。ビジネスモデル(事業企画)の作製などのより高度のノウハウを修得し、即戦力の人材を養成するとともに、大学発ベンチャーのスタートアップを支援します。
>>詳しくは研究科サイトをご覧下さい。

研究業績

  1. 早乙女周子、中屋百合恵、佐藤嘉朗、福田宗弘 日本知財学会第12回年次学術研究発表会「米国バイオベンチャーの特許出願に関する調査研究」2014
  2. 田中美希、阿部誠二、早乙女周子 日本知財学会第12回年次学術研究発表会「橋渡し研究(トランスレーショナル:リサーチ:TR)における特許出願マネジメントに関する調査研究」2014
  3. Yukiko Hashitera, Chikako Saotome, Hirokazu Yamamoto ”Analysis of 10 years drug lifecycle management (LCM) activities in the Japanese market” Drug Discovery Today,Vol.18, 1109-1116(2013)
  4. 早乙女周子、寺西豊、阿部誠二「ライフサイエンス分野における大学の知的財産活用と普及の在り方とは」日本知財学会誌,10,1,49-58(2013)
  5. 服部陽介、早乙女周子「iPS細胞作製技術における知財戦略の事例研究」日本知財学会誌,9,1,77-89(2012)

 

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