京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

医学コミュニケーション学

医療・医学におけるコミュニケーションを
コミュニケーション学の視点から学び、研究します

お知らせ
第9回ヘルスコミュニケーション学会の抄録募集を掲載しました
ダウンロード

  • 准教授: 岩隈 美穂
  • 准教授: 岩隈 美穂

概要

  • 健康管理学講座 医学コミュニケーション学
  • 准教授: 岩隈 美穂 Iwakuma, Miho
  • TEL:075-753-4668
  • e-mail:

こんな学生募集中

現在、医療におけるコミュニケーションの大切さが認識され、ヘルス・コミュニケーションを受講できる大学が増えていますが、コミュニケーション学出身の教員がコミュニケーションについて医学部で教える大学は今だにほとんどありません。2008年度に京都大学に開講した「医学コミュニケーション」は、「医学・医療をコミュニケーションの視点から研究する」をテーマに掲げ、専任教員である岩隈はコミュニケーション学出身者です。医師、患者間のコミュニケーションはヘルスコミュニケーションで扱うテーマの一部と考えていますが、さらにマクロな視点が「医学コミュニケーション」だと言えます。この壮大なテーマに取り組みたい人、まだ海のものとも山のものとも分からない始まったばかりのこの分野を一緒に開拓していきたいと願う方、医学コミュニケーション「を」学びたい人より、医学コミュニケーション「で」何をしたいのかが明確な方が研究室の門をたたくことを希望します。また医療系の学生だけでなく、社会学、コミュニケーション学、障害学に関心がある学生も歓迎します。

研究・教育について

教育について

前期前半:医学コミュニケーション・基礎
21年度から、本コースは医学研究科社会健康医学系専攻のMPHコア科目の一つになりました。医学コミュニケーションの開講講座として、さまざまなバックグランド、専門、興味を持つ学生への対応を目的とした基本的事項を網羅し理解、検討を行います。
7回の短期集中コースで、コミュニケーションというと「一対一の対面での言語を使ったコミュニケーション」をまず思い浮かべることが多いので、まずその常識を崩すこと、そのために非言語コミュニケーションを中心に話しています。またコミュニケーション学でつかわれているいくつかのフレームワークを紹介し、必要に応じて自分のリサーチに取り入れてもらうことを目的としています。
講義目標

  • コミュニケーション学からの理論を用いた医学コミュニケーションの基本的枠組み、コンセプトを理解する。
  • 医学コミュニケーション領域内で自分の関心分野を意識し、問いを立てることが出来る。

前期後半:医療社会学
医療社会学とは「健康・病気と保健・医療に関わる世界の問題を、行動や生活、家族や集団、地域や社会、文化などに関する社会学の理論と方法を用いて解明する学問分野」(山崎喜比古(編)、2001、「健康と医療の社会学」まえがき より)です。
医療社会学という分野には、「医療における社会学」(Sociology in medicine)と「医療についての社会学」(Sociology of medicine)という2通りのアプローチがあります。前者の「医療における社会学」は、社会学の知見や技法を医学教育や医学研究での応用を目的とし、主に医療者が問題解決のため用いる手法であるので対し、後者の「医療についての社会学」は、医療を多岐にわたる社会学の一つのフィールドととらえ、医療者が無意識に前提としている、システム、儀礼、社会関係、価値観などを社会学の視点から相対化し、いわば「医学を外側から眺めている」格好となります。
講義目標

  • 医療社会学とは何か、を説明できる。
  • 医療社会学の概念、理論、方法論を理解する。
  • 「人文学・社会科学」からの医療・医学への視点や語彙を提供し、履修者たちの描く「理想の医療」への改革へのヒントにすることができる。

後期:医学コミュニケーション・演習
15回のクラスで、質的研究方法(会話研究、SCAT、エスノグラフィーなど)をいくつか取り上げます。質的研究にも多くの手法があり、自分が知りたい疑問(リサーチクエスチョン)に合わせて、適切な方法を選ぶ必要があります。実際に研究が始まる前にいくつかの道具(ツール)を試しておいたほうがいいので、自分のリサーチクエスチョンを意識し方法論を模索し始める時期に受講することをお薦めします。また自学自習が比較的難しい質的研究は、一緒に受講している「伴走者(=クラスメート)」がいると、課題・疑問を共有しながら学びやすいです。そのため授業形式としてはグループワークなどを通して「分析を実際に経験」することを重視しています。また前期で取り上げたテーマを深く掘り下げたり、「障害学」についても触れたりしています。
講義目標

  • いくつかの質的研究方法を理解する。
  • 自分のリサーチクエスチョンにあった研究方法を選択できる。
  • 障害学について理解できる。

研究について

医療コミュニケーションが主に「患者と医療者のコミュニケーション」に焦点を当てているのに対し、医学コミュニケーション分野は医療におけるコミュニケーションを、イントラ(例えば、個人の死生観)、ミクロ(例えば、医療現場における対人コミュニケーション)、メゾ(例えば、CBIS)、マクロ(例えば、医療哲学)のレベルに分け、コミュニケーション学、医療社会学、障害学といった社会科学的な視点で医療を研究します。また本分野では、ヘルスコミュニケーションの内容・結果だけでなく、そのプロセスや「なぜ」「どうやって」という問いに関心を寄せ、コミュニケーションという切り口で、医療を研究したい人向けの講座です。まさに「人が関わればこれコミュニケーションなり」です。また自然科学に立脚した医学だけでなく、社会と医学のかかわりをコミュニケーションの視点から研究していきます。
最後に、研究にはその人個人の歴史や軌跡が色濃く反映されます。私自身の研究内容も、異文化コミュニケーション、ヘルスコミュニケーション、障害学とあっちこっちと一見脈絡が無いようでいて実は「当事者から見た世界」に常に関心があり、「平均像」ではなく個々の世界観に肉薄する研究をしてきました。「医学コミュニケーションを学んで何になるのか」。この問いに対して、今私の言えることは、「学問とは地図を獲得するようなもの」。つまりそれによって自分の進みたいと思っている地形の起伏・形状を教えてくれたり、いつ終るかも判らない旅のプロセスの予測を立てやすくしてくれる。が、地図自体があなたにあの目的地をめざしてこのルートで行け、とは言わない。最短距離をめざすのか、目を引く景色に出会ったら回り道をするのも自由。 医学コミュニケーションという地図(ツール)を使ってあなた自身の研究をデザインしてください。

主な研究業績

  1. Iwakuma, M., Oshita, D., Yamamoto, A., & Urushibara-Miyachi, Y. (in press). The effects of breathing-based meditation on earthquake-affected health professionals. Holistic Nursing Practice.
  2. Iwakuma,M.,Nakayama,T.,Oshita,D.,& Yamamoto,A.(2016).Short – Term Loosen Up Meditation Induced EEG and Autonomic Response in Healthy Japanese Students. J Alt Med Res 2(1): 113.
  3. 岩隈美穂.(2016). 人文・社会科学系と医学・医療系の協働の可能性:
    PBL教材作成WSに参加して.新しい医学教育の流れ.
  4. 山本明弘・岩隈美穂・大下大圓.(2016).2日間の瞑想講習会が瞑想初級者の気分および首尾一貫感覚へおよぼす影響:Temporary mood scaleおよびSense of coherence scaleを用いた検討.日本保険医療行動科学会雑誌、31、61-69.
  5. Iwakuma, M. (2016). “When I am in Japan, I feel as though I’m not disabled”: A cross-cultural adjustment study of trainees with disabilities from Asia-Pacific regions. Disability Studies Quarterly.
  6. Miyamoto, K., Iwakuma, M., & Nakayama, T. (2016). Experiences and attitudes of residents regarding a community-based genomic cohort study in Japan: a population-based, cross-sectional study. BMC Medical Genomics.
  7. Miyamoto, K., Iwakuma, M., & Nakayama, T. (2015). Residents’ awareness and attitudes about an ongoing community based genome cohort study in Nagahama, Japan. Public Understanding of Science.
    http://pus.sagepub.com/content/early/2015/03/05/0963662515574455.full.pdf+html
  8. 岩隈美穂・中山健夫.(2015).京都大学公衆衛生大学院(SPH)におけるコミュニケーション教育の現在.日本ヘルスコミュニケーション学会雑誌、5、4-6.
  9. 岩隈美穂.(2015).「震災復興支援としての瞑想講習会」.Emergency Care, 6,102-104.
  10. Iwakuma, M. (2014). Struggle to belong. Hampton Press.
  11. Miyamoto, K., Iwakuma, M., & Nakayama, T. (2014). Social capital and health: implication for health promotion by lay citizens in Japan. Global Health and Promotion.
  12. 岩隈美穂.(2014)「障害という「資本」を生かす」. In嶺重慎・広瀬浩二郎(編)『知のバリアフリー』(pp.123-129)、京都大学学術出版社.
  13. 岩隈美穂.(2014).「インクルーシブデザインと商品開発への当事者参画」.In 小川喜道・杉野昭博嶺重慎(編)『よくわかる障害学』(pp.36-37)、ミネルヴァ書房.
  14. 岩隈美穂.(2014).「障害と文化:二つのアプローチ」.In 小川喜道・杉野昭博嶺重慎(編)『よくわかる障害学』(pp.184-185)、ミネルヴァ書房.
  15. Oshita, D., Hattori, K., & Iwakuma, M. (2013). A Buddhist-based meditation practice for care and healing: An introduction and its application. International Journal of Nursing Practice, 19, 15-23.
  16. 岩隈美穂.(2013).「自己内対話」.In石井敏・久米昭元(編)『異文化コミュニケーション辞典』、春風社.
  17. 岩隈 美穂・鳥海 直美.(2012).「カルチュラルプローブを使った高齢者施設でのケアとインクルーシブデザインの試み」.インターナショナルナーシングレビュー,35,51-60.
  18. 岩隈美穂・山口洋典・大下大圓.(2012).「宗教と医学の対話を拓く:宗教家による災害での援助活動から」『日本ヘルスコミュニケーション学会雑誌』,3,27-33.
  19. Iwakuma, M. (2011). Disability in the Far East: How Japan has responded a phenomenon of disability. Review of Disability Studies, 7.
  20. 岩隈美穂 (2010).「医学コミュニケーションについての覚え書き」、『日本ヘルスコミュニケーション研究会雑誌』、vol.1, pp. 43-47.
  21. 岩隈美穂 (2010).「マジョリティからマイノリティへの移行:身体障害者の例から」 In酒井郁子・金城利雄(編)『リハビリテーション看護』、南江堂.
  22. 岩隈美穂・酒井郁子 (2010). 「障害とともに年をとる」 In酒井郁子・金城利雄(編)『リハビリテーション看護』、南江堂