京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

2014年度の卒業生の声

■専門職学位課程

新たな活動へのきっかけに

片岡裕貴
医療疫学分野

私は、卒後の6年間は市中病院で呼吸器診療と卒後臨床教育に関わっていました。
その中で出てきた、どうやれば現場での診療の質を測定し改善できるのか、という疑問を解決したくなり、2013年に社会健康医学系専攻に入学しました。
課題研究では診療の現場で困っていた、悪性胸膜中皮腫患者さんの予後予測指標を作成しました。
「臨床研究」と一口に言っても、大規模RCT、ビッグデータを用いた観察研究から、個々の患者さんに分け入る質的研究までさまざまな手法があります。社会健康医学系専攻では、みなさんのフィールドでの経験から出てきた疑問を臨床研究のまな板に載せるための方法論を各分野のトップを走る先生方から教わることができます。
また、様々な職種として、モチベーション高く働いてきた同窓生との交流も魅力の一つだと思います。私の場合もそこから新たな活動へのきっかけを与えてもらいました(はじめて医学教育を学ぶ人の会)。
日々の仕事に+αを求める方、ぜひ一度オープンキャンパスに来てください。

HIV予防啓発や抗HIV薬の服薬向上活動に携わった経験

立山 由紀子
社会疫学分野

アフリカ地域におけるHIV予防啓発や抗HIV薬の服薬向上活動に携わった経験から、現地のニーズや課題の把握、活動の評価を行うには、フィールドや課題に即した研究方法の習得が必要であると感じ、社会健康医学(SPH)の門を叩きました。SPHは、専門職学位課程だけあり、分野を問わず、様々な経験を持つ志の高い学生が多く、いわゆる「多様性のるつぼ」であります。先生方の専門性の高い講義からは多く知識を得ることができ、多様な視点を伴ったグループワークにおける共同作業やディスカッションは、講義だけでは得られない貴重な学びの機会にもなりました。所属の社会疫学研究室においては、留学生が多く、社会に関連した健康課題に対する国際的で多角的な視野を養うことができたと感じています。課題研究では、先生方の手厚いご指導や研究室のメンバーの支えにより、漠然としていた健康に関する疑問を、研究という形に具現化することができ、また、データ収集、分析、執筆、発表という一連のプロセスを経験することで、机上の学びを実務に反映する達成感と自信を得ることができました。SPHでの2年間は、多くの学びや人々との出会いを得ることができた、とても有意義な時間であったと感じています。健康に関する疑問を抱えている方は、解決のための糸口をSPHで学んでみてはいかがでしょうか?

専門職学位課程を受講して

岸田瑠加
健康情報学分野

私は、歯科麻酔科に所属する歯科医師です。初期臨床研修を経てすぐに社会健康医学系専攻(SPH)の専門職学位課程へ入学しました。臨床経験が浅かったことから、自分の専門性を深めるとともに臨床疫学研究を行うべく、社会人大学院生として働きながら学ぶことを選択しました。多忙ではありましたが、様々な専門性を持つ志の高い仲間に支えられ、第一線で活躍されている著名な先生方から、臨床疫学研究に関する知識を系統的な講義で学ぶことができ、非常に刺激的で有意義な日々を過ごせました。さらに、それらを自分のフィールドへ応用し、研究実施の楽しさや難しさを肌で感じるなど、教科書や先行研究といった机上では得られないことも経験できました。京都大学のSPHは、学問と臨床の場をつなぐための手法を身につけられる、大変貴重な場であると思います。本学で得た人脈と知識は、私の人生において大きな財産になるであろうことを確信しております。医療従事者に限らず、確かな根拠に裏打ちされた価値観を社会に発信したい方には、ぜひとも入学をお勧めします。

ゴールまでの軌跡が描けず苦しんでいる人に

岩上直嗣
健康増進・行動学分野

もう限界でした。
 医師として、循環器内科医として日々真摯に患者さんと向き合えば向き合うほどに、調べても解決されない疑問が積み重なり、信じていたエビデンスには裏切られ、自ら実証しようにもやり方がわからず、救いを求めるように京大の門を叩きました。
 たった1年しか学んでいない半端者です。偉そうなことは言えません。でもこの1年でずいぶんと引出しが増えたように思います。臨床医学には、ヒトを相手にする性質上、特有のロジックがあります。何か素晴らしいアイデアがあってもそれを世に認めさせるためには一定のお作法に乗っ取って主張する必要があります。このお作法というのが曲者なわけですが、それはともかくとして逆に最低限のお作法を通り一遍学んでおくだけで、研究の幅は著しく広がります。実際に自分で使うかどうかは別として、こんな研究もできる、という選択肢とその基礎を知っているのと知らないのとでは大きく違うのではないでしょうか。あるいはその手法に詳しい人にいつでも相談できる環境というのは日本において他にあるのでしょうか。
 私にはこれを独学で学ぶことはできませんでした。学部生の頃から臨床研究に興味を持って片手間で統計の本を広げてきた身です。でも、統計を使う前にそもそも比較するに値するのかどうか吟味する事の方が小難しい統計の手法を知っているよりもはるかに重要だなんてどの本にも書いてありませんでした。
 自らのフィールドとアイデアを持ち、でもそれをどのように生かせばよいのか、ゴールまでの軌跡が描けず苦しんでいる人にこそ京大SPHをお勧めします。

「学ぶのに遅すぎることはない」の精神のもと、思い切って新しい世界に

宮本義久
薬剤疫学分野(MCRコース)

なぜMCRコースへ?

臨床研究を独学で行うには自分が正しいことをしているのか不安があり、体系的に学ぶことを目的に入学しました。

京都大学の特徴は?

日本で最初に設置された公衆衛生大学院である強みを活かした充実したファカルティの存在、臨床研究者養成に特化したMCRコースがあることが特徴だと思います。

卒後何年くらいで入学するのがいいでしょうか?

クリニカルクエスチョンを形成するには、ある程度の臨床経験を有することが望ましく、卒後5から10年前後の同級生が多かったです。私自身は卒後17年目の入学で同級生の中でも遅い方だったのですが、「学ぶのに遅すぎることはない」の精神のもと、思い切って新しい世界に飛び込みました。
臨床研究を行うにあたり必要な、研究デザイン、文献検索・評価、統計学、疫学について講義、実習を通じて学び、さらに応用として経済評価、システマティックレビューについても学ぶことができます。また、MCRコースの目玉である、研究プロトコールマネジメントの講義では、研究プロトコールを練り上げ、結果をまとめるに際して、各分野の教授を始め教員の先生方から、様々な角度から貴重な意見を伺うことができます。

薬剤疫学分野の特徴は?

レセプトデータ、DPCデータ、調剤データを用い、今後臨床研究の主流の一つになると考えられるデータベース研究について指導を受け、実施することができます。また、統計学、CER(比較効果研究)の分科会があり、興味があれば応用的なことも学べます。

京都大学SPHは、やる気さえあれば様々なことを吸収できる充実した環境です。多くの人が本SPHに進学され、社会にとって有為な人材が輩出されることを願っています。

医師人生の転機となる1年間

古板 規子
予防医療学分野

2013年、私は、卒後10年目の産婦人科医として勤務していました。専門医取得後、次の目標もみつからないままに日々を過ごしていましたが、そんな時、たまたま京都大学に臨床研究者養成コース(MCRコース)が設置されていることを知りました。臨床研究には以前より興味があり、さっそく調べてみると、願書の締め切りがあと2週間(!)という時期でした。大急ぎで準備をして、なんとか2014年4月にMCR専科生として入学することができました。
久々の学生生活はとても新鮮で、目まぐるしく毎日が過ぎていきました。授業では、疫学、臨床研究のデザイン、医療統計学や統計ソフトを使用した実習など、これから臨床研究を始めるうえで必須となる知識を系統的に学ぶことができました。先生方の熱意あふれる授業はもちろん刺激的でしたが、さまざまな経歴をもつ同期の学生からもとても刺激を受けました。
課題研究については、所属する予防医療学分野の先生方から丁寧な指導をいただきました。自分のもやもやしたリサーチクエスチョンは少しずつ明確になっていき、最終的に研究プロトコールを完成させることができました。4月からは臨床現場に戻りますが、研究はやっとスタート地点です。臨床研究もできる産婦人科医を目指して、これから頑張っていきたいと思います。

何歳になっても学びたいという意志があれば学び続けることができる

田中 美希
知的財産経営学分野

私は大学の基礎研究成果を実臨床へ活用させるための知的財産マネジメントを学びたいと思い、研修歯科医修了後にSPHへ入学しました。SPHでは医療従事者や企業経験者、文系学部卒業生など多様なバックグラウンドの同級生と共に学び、大変刺激的な毎日を過ごすことができました。30代以上の同級生も多く、仕事を続けながらも積極的に講義や研究に取り組む彼らの姿には、何歳になっても学びたいという意志があれば学び続けることができるのだと強い感銘を受けました。また所属していた知的財産経営学分野では実務経験豊富な先生方に指導していただき、SPH入学時より希望していた研究を行うことができました。専門職学位課程の2年間は短く、学び切れない部分も数多くあります。ですが修了後も、このSPHで培ってきた学びへの積極的な姿勢を忘れずに業務へ活かしていきたいと思っています。医療にまつわる様々な疑問を持つ方、そしてその疑問を解明するために学びたいと思う方、年齢や専門分野など気にせずにぜひ京大SPHで一緒に学びましょう。

■博士後期課程

社会の元気のなさを学問の立場から探求

後藤 悦
医療経済学分野

ソフトウエア企業で技術者として勤めていましたが、社会の元気のなさを学問の立場から探求してみたくなり、大学の経済学部へ3回編入学しました。進学した修士課程で医療経済と出会い、健康を維持・回復する医療サービスについて、実地に基づいた研究を志し、本専攻専門職学位課程ならびに博士後期課程に入学しました。
 本専攻では、入学初年度に疫学、医療統計学、医療倫理、国内外の医療制度、医療と情報・コミュニケーション等、幅広い講義が開講されます。座学、グループ討議、フィールドワークと多岐に亘り、専門性は言うまでもなく、大変充実しています。これらは健康や医療にまつわる様々な制度や事象を探求する際に必要不可欠な片腕となります。また、本専攻は、先生方、先輩、同輩と研究テーマや分析手法、考察に至るまで活発な討議を重ねながら研究をすすめていくことができる場でもあります。更に、医学研究科でありながら非医療系の出身者も多く、各々の多彩なバックグラウンドから出される提案で得られる知見は他では得がたいものでした。このような素晴らしい環境から研究者としての第一歩を踏み出せたことに感謝しています。
 京大SPHには健康・医療にまつわる諸問題を探求する様々な扉があります。ノックすれば、そこにはトップクラスの頼もしい先生方、優しく厳しい先輩、討議に熱心な同輩らが待ち受けている筈です。