京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

2012年度の卒業生の声

■専門職学位課程

1年間MCRコースを受講して

小川 雄右
健康増進・行動学分野(MCRコース)

社会健康医学系の学生には、様々なバックグランドの幅広い年齢の方がいて、一緒に講義・実習を受けたり、ディスカッションをしたり、飲みに行ったりするのはとても新鮮でした。
僕は1年間かけて臨床研究の方法論について学ぶ、医師・歯科医師向けのMCRコースに所属しました。MCRコースには全国から意欲ある様々な科の医師が集まっており、大変刺激を受けました。入学してしばらくは毎日朝から夕方まで講義がありましたが、どの講義も面白く役立つものばかりでした。特に「研究プロトコル・マネジメント」という科目は、MCRコースの全ての院生が自分の研究計画を発表し、それに対して、6つの分野の教員の先生方が、各人の臨床上、研究上の疑問、問題点を解決するために意見を言ってくださるという、とても贅沢な内容でした。自分の発表の時だけでなく、他の院生の発表に対するコメントを聞いているだけでも知的好奇心を強く刺激されたのを思い出します。初めの4ヶ月間は完全に臨床を離れ、朝から晩まで講義・課題に取り組むという、普通に医師として勤務していれば経験のできない貴重な時間でした。多くの先生方にたくさんのことを教えて頂いたことはもちろん、様々な専門の仲間ができたことも大きな財産です。

刺激的な人々との出会い

黄瀬 恵美子
遺伝医療学(遺伝カウンセラーコース))

私は病院で働いている中で遺伝カウンセリングについて学びたいと思い、入学しました。授業では、受講している私たちが多様なバックグラウンドを持つにも関わらず、どの先生方も丁寧に、何より熱意を持って教えて下さっていました。第一線で研究されている先生方の熱意に刺激を受け、興味はどんどん膨らみ、それぞれのフィールドで活用できる視点や、考え方を自然と身に付けることができていたように感じます。
また、授業ではグループワークが多くあったので、様々なバックグラウンドの同期の意見はとても新鮮でした。自分が知り合うことのなかったような職種や分野の人、多様な背景を持つ同期との出会いも大きな刺激でした。そのような同期とディスカッションする中で、今までの自分にはなかった視点や興味がどんどん湧いてきたように思います。共に学ぶ中で本音を言い、たくさんぶつかったこともありましたが、つらい時は大きな支えとなってくれるような存在でした。
本当に、社会健康医学系専攻に入学して、今まで出会ったこともない先生や同期、先輩方と出会う機会を得られたことが、何よりも私の宝となったと思います。ここで出会った様々な人や知識から得たたくさんの刺激こそが、今後どのような職業に携わっても自分の原動力になると確信しています。

決して楽な道ではないけれど

里 英子
社会疫学

臨床および国際保健分野に従事した後、MPH取得の重要性を認識し、社会健康医学系専攻(SPH)に入学しました。諸先生方の高度な専門性と熱心で質の高い講義は大変興味深く、また様々なバックグラウンドを持つ志の高い同期には、大変刺激を受けました。ご指導いただいた木原正博教授と木原雅子准教授率いる社会疫学教室は、国際色豊かで、ゼミの発表およびディスカッションは全て英語で行われ、PresentationやCritiqueの方法などを学びました。
京大SPHでの2年間は、多様な専門分野のカリキュラムとコースワークに加え、フィールドでの研究と、忙しく過ぎた学究生活でしたが、ここでしか得られない貴重な学びがあったことは言うまでもありません。公衆衛生に関する様々な知識を体系的に習得するだけでなく、その学びを実際の研究に活かせたことで、フィールドの探索や研究実施の難しさを肌で感じ、机上では得られない貴重な経験となり、いろんな方々のサポートを受けて研究を行えていることを実感しました。京大SPHは、学際的な知識と実践を通した深い学びが魅力であり、専門職として、学際的な知見を社会にどのように還元するのかを常に意識させてくれる貴重な場所だと思います。

学んだすべてが仕事のプラスに

中村 隆
医療統計学

製薬会社の統計プログラマーとして10数年間、大半を抗がん剤の開発に携わっていました。しかし、抗がん剤の開発には、評価される薬剤の後に別の薬剤が投与されても、後に投与された薬剤の影響を含めた生存時間で解析が行われており、疑問に思っていました。そこで、後治療の影響を除いた薬剤の評価ができる解析手法の研究をするために本専門職学位課程へ入学しました。
とはいえ、大学で数学を専攻していた私には、社会健康医学、特に医学に関しての知識がほとんどなく、とても不安でした。しかし、本課程では私のような医薬学部専攻以外の学生のために医学基礎コースが準備されており、ホメオスタシスのような医学の基礎から学ぶことができました。また本課程では、医療統計学、疫学、環境衛生学、行動科学、医薬品政策、医学コミュニケーションなど多彩な分野が提供されており、自分の研究を進めていくうえで、社会健康医学全体の基礎を築くことができました。
本課程では様々な知識や経験を持った方々と、グループワークや行事を通して知り合うことができました。時には思いもよらない視点からの意見や発想に驚かされたり、研究に打ち込む姿に刺激を受けたり、挫けそうになった時に励ましてくれたりと、良きライバルであり、良き仲間となりました。本課程で過ごした時間や体験は、一生ものです。

一歩ずつ

藤田 光一
予防医療学(MCRコース)

私は臨床医として勤務しながら学会発表や臨床研究に取り組んでいましたが、暗中模索のような状態で、「わからない」ことに大きなストレスを感じていました。このまま疫学や統計学の基本を理解せずに臨床研究に取り組み続ける事は非常に危ういと感じ、SPHの臨床情報疫学コース(MCRコース)への入学を志望しました。
実際に入学してみると、臨床研究の基礎はもちろん、医療社会学や医療経済学など社会的、政策的な視点や、予防医学のような長い時間軸での視点からの講義も受けることができ、医療の構成や役割を見直すことができました。また様々な職種や背景を持ったSPHの同期生と議論しながら学ぶ事を通して、異なる視点・能力を持ったメンバーが集まってチームで取り組む事の大切さや凄みを実感しました。
今後、多忙な臨床現場に復帰しますが、SPHで学んだ論理的思考や様々な立場・視点から考える姿勢を忘れずに臨床診療に取り組み、同時に臨床に根差した研究を少しずつ積み重ねていきたいと思います。

知の泉

堀田 勝幸
健康情報学(MCRコース)

私は大学病院で内科診療をしていましたが、日々の業務で生じる臨床疑問に対し、どう解決するのが適切なのかわからず、都度その場凌ぎの研究をデザインし、疑問解決していました。この悪循環を切るには、疫学・統計学に関する系統的かつ実践的な勉強が必要だと考えて、京大SPHに挑戦することを思い立ちました。
京都大学での恵まれた就学環境のもと、提供される学習内容は濃厚でとても充実していました。臨床研究・疫学研究に関する学ぶべき内容が効率的に詰め込まれたプログラムで、いつの間にか「知の泉」にどっぷりつかっていました。研究疑問の立て方、解決するための一連の研究デザイン、統計処理方法等々…危うく溺れかけた時には、メンターの先生を始めとしたSPHの先生方からの懇切丁寧なご指導で、都度救い上げていただきました。また、多くの同級生との貴重な出会いもありました。それぞれが異なる背景の方々で、いろいろな視点からのものの考え方を教えてもらいました。今までの人生の中で本当に贅沢な時間だったと痛感しています。
知の泉から全てを吸収できたわけではありませんが、今後は京都SPHで習得した実践的な知識をどんどん臨床に生かしながら、疑問に正面から向かっていきたいと思います。 思い切って来てよかった、真にそう思えた学び舎でした。

卒業後の目標

渡辺 智子
遺伝医療学(遺伝カウンセラーコース)

「遺伝カウンセラーになりたい」という思いを胸に、社会健康医学系専攻(SPH)に入学しました。京大病院と兵庫医科大学病院を合わせて、1年間で約150症例もの遺伝カウンセリングに陪席させていただきました。非医療系学部出身の私にとっては、自分が患者以外の立場で病院に行くのすら初めてで、どう話を聴いたらよいのだろう、何て言葉を返したらよいのだろう…と模索する日々でした。これが正解ということのない対話の中で、クライエントさんの考えをクライエントさんの言葉で整理できる遺伝カウンセラーを目指して、今後も頑張ります。
また、遺伝カウンセラーのための勉強はもちろん、専門職学位課程ならではの公衆衛生の専門的な授業もたくさん受けることができました。ただ、その面白さはわかりやすく手短に説明することができません…。よく友人から「大学院で何をしているの?」、「修論はどんなテーマだったの?」と尋ねられますが、未だに困ってしまいます。いつか異なる分野の友人にも「面白そうだね!」と言ってもらえるように、遺伝カウンセリングやPublic Healthの魅力をわかりやすく伝えられるようになりたいです。

今後の人生にとって大きな財産

写真

安田咲こ
社会疫学

吉備国際大学看護学科卒。国立病院看護師、公立小学校養護教諭(保健室の先生)としての社会人経験を経て、効果的な保健教育方法について研究するため、2011年同学入学。

なぜ当大学院を選んだのか?

ボランティアとして関わっていた民間のHIV感染予防教育や学校保健として実施していた健康教育のあり方に疑問を感じ、より専門的な知識を身につけるために大学院へ進学することにしました。本学は日本初の公衆衛生専門大学院としての歴史を有するだけでなく、多くの著名な教授から直接講義を受けられることも魅力でしたが、私が師事したい教授がおられたことが決め手でした。

実際に入学してみてどうだったか?

専門職大学院ということもあり社会人経験のある学生が多く、各々の学生が明確な目的意識を持って学んでいました。授業や課題は大変でしたが、国内外から集まるモチベーションの高い学生と共に過ごすことで学習に対する意識も大幅に変わり、教科書以上の学びがありました。バックグラウンド・年齢・性別・国籍・宗教・目的の異なる様々な学生と2年間を共有できたことは、今後の人生にとって大きな財産であると感じています。

私のオススメ科目

■社会疫学
社会疫学の概念から方法論まで様々なことを学びました。質的調査のためのインタビュー練習や、量的調査のためのアンケート作成など実践的な演習もあり、研究実施時にとても役立ちました。

■統計学
講義ではデータの見方など基礎的なことを学び、演習ではデータ解析方などの応用も学びました。数字の意味について学んだことで視野が広がり、学ぶ楽しさを実感出来ました。

■課題研究
研究は本当に大変でしたが、実際にフィールド調査をすることで、1年次に授業で学んだことの理解が深まりましたし、研究の楽しさも実感しました。

なぜ当大学院を選んだのか?

専門職大学院ということもあり社会人経験のある学生が多く、各々の学生が明確な目的意識を持って学んでいました。授業や課題は大変でしたが、国内外から集まるモチベーションの高い学生と共に過ごすことで学習に対する意識も大幅に変わり、教科書以上の学びがありました。バックグラウンド・年齢・性別・国籍・宗教・目的の異なる様々な学生と2年間を共有できたことは、今後の人生にとって大きな財産であると感じています。

お金のやりくり法

学費は全額免除して頂いていましたが、生活費等のために日本学生支援機構からの貸与型奨学金と、民間企業からの給付型奨学金を受給していました。仕事やアルバイトをしながら大学院に通っている学生もいました。

ある一日のスケジュール

7:00~8:30 通学:大阪から毎日満員電車で大学院に通っていました。
8:45~12:00 授業:大学院の授業だけでなく、体育や語学など自分が興味のある学部の授業も聴講していました。1年次は毎日朝から夕方まで授業を受講していました。
13:00~18:00 授業:1年次で大学院の必要単位をほとんど取り終わったため、2年次はあまり大学院に行かず研究のための調査等をしていました。
18:00~23:00 1年次は翌日の予習・授業の課題・テスト勉強などをしていました。
23:30~1:00 終電で帰る日も多く、自宅に着くのは真夜中でした。

■博士後期課程

School of Public Healthの思いを京都から

今中 美栄
予防医療学

「疫学は何億人もの命を救うことのできる学問である」という一文を或る本の中に見つけた時、感激したことを覚えています。大学卒業後、国立公衆衛生院で「国民の生命を衛る」公衆衛生という専門分野と出会いました。健康でありたいと思う人たちへ何ができるかを語りあいました。病院勤務時代には患者さんから病気と共に向き合う姿勢を学びました。栄養学と食行動、食文化や食環境はそれぞれが個人の健康に大きくかかわっています。栄養は身体をつくります。社会環境や生活環境が食行動に影響します。それは究極の個性の現れだと思います。管理栄養士としてそれぞれの食の個性を尊重した栄養サポートをするためのエビデンスを構築したいと願いSPHの門を叩きました。社会健康医学系専攻予防医療学分野では、「臨床現場でいかせる研究」をモットーに熱いディスカッションが繰り広げられています。教えを待つのではなく、自らが学ぶ姿勢をもつことの大切さも教えていただきました。
将来、管理栄養士が予防医療学の一端をになえる時代の礎になれたらと考えています。春から管理栄養士養成教育に携わる機会を得ました。予防医療に関わる人材の育成においてもSchool of Public Health の思いを京都から発信し続けたいと思います。

社会の健康・医療を多角的かつ統合的に学べる場

田中 将之
医療経済学

私は、医療の政策・経営に纏わる問題解決に関わりたく、医療の質と経済性の評価に関する研究を志し、本専攻専門職学位課程ならびに博士後期課程に入学しました。
本専攻では、専門領域に加え、社会における健康・医療を探求するための基盤となりうる定量的分析・評価に関わる疫学・統計学領域から、倫理的思考の醸成や健康情報と健康増進、国内外の政策活動や社会疫学等まで、社会の健康・医療を多角的かつ統合的に学ぶ機会(研究・教育)を得ることができました。
この5年間を通じて、エビデンスとなるデータ分析手法とその重要性、さらに、健康・医療の向上には、関係するプレイヤーが主体的に関わる環境を整備すること、そして患者や市民、行政、医療機関、医療者、研究者等がネットワークやコミィニティを形成していくことが重要であることを学びました。その中で、研究者は、より客観的なデータ・根拠に基づく、問題解決へ向け、倫理的思考のもと、得られたあらゆる情報を統合し、新たな領域や成果を創造していくことが社会から求められていることを体感しました。このようなことを体感できることが、京都大学SPHの強みだと思います。今後多くの専門職・研究者を志す方々に実感して頂きたいと思っております。

多様な人とのディスカッションを通して、物事を深く広く考えることができます。

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鳥嶋 雅子
医療倫理学

専門職学位課程(遺伝カウンセラーコース)を修了した後、研究を継続したいという思いから、医療倫理学分野の博士課程に進学しました。
専門職学位課程には、医療系だけでなく非医療系の人もおり、年齢層も幅広く、多様なバックグラウンドや価値観を持った人がいます。このような仲間や先生方とのディスカッションを通して、一つの物事を多角的に考え、深めていくことができたように思います。
社会健康医学系専攻博士課程の大学院教育コースミーティングでは、月1回のミーティングと、年1回の合宿を行っています。合宿では、博士課程の院生が各自の研究について発表し、先生方や院生とディスカッションを行います。自分の研究室以外の先生方や院生からの意見をもらい、自身の研究について視野を広げる大切な機会となっています。また、合宿という形式であるため、夜通し熱いディスカッションができるというのも大きな魅力です。
私は、遺伝カウンセリング学を専門にしていますが、このような多様な人とのディスカッションを通して、幅広い考えや価値観を知るということは、研究だけでなく実践をしていく上でもとても貴重な体験だった感じています。

臨床にプラスアルファを

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濱田 啓義
医療経済学

俗に言うたらい回し(正確には受入不能)」や司法による医療事故への介入など、医療崩壊という言葉が産婦人科医をしている自分の周りでも現実に起こり始めていた数年前。何気なく当直室で医療経済学の入門書を読み、まさにこれこそが自分の求めているものだと確信を得た私は、その後、京都大学の社会健康医学系専攻に医療経済学の教室があると知りその門をたたきました。
座学にとどまらないということが当専攻の特徴の1つですが、実際のデータ分析や実地調査、ディスカッションを通じて学んだ医療制度や医療の質、組織のあり方、医療機関の経営などの知識は、現在の医療機関の経営に携わるというキャリア形成に大きな影響を与えてくれました。
加えて疫学や統計学、感染症・環境疫学など、なかなか臨床の中で系統的に学ぶ機会のなかった分野も、医師としての視点を拡げ、日々の臨床においても大いに役立っています。
そして何より、様々なバックグラウンドをもつ仲間との交流は将来にわたり何にも代えがたい財産となることは間違いありません。
日頃の臨床で何かもやもやした感じを抱えている方、臨床に加えて何かプラスアルファに興味がある方、そうでない方も、ここにはあなたの求める答え(それにつながる何か)があるかもしれません。皆様の参加をお待ちしております。