京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻

2011年度の卒業生の声

■専門職学位課程

専門性のるつぼ

髙田 理浩
医療統計学分野

「○○を食べたら痩せるんだって」「え、ほんとー」という会話を経て、私のように下腹部が大きくなった方はいませんか。
私は、細胞・動物を用いた食品の機能性研究を経て、人での効果に興味を持ち、食品会社入社2年目に社会人兼学生という立場で、医療統計・疫学を学ぶため再び京都大学に戻ることになりました。社会健康医学(SPH)には、私のように医療系出身でない方も沢山在籍しています。1年目には医学基礎などが開講されており、医療系以外の方へのフォローも充実しています。「私はちょっと専門分野が違うから…」と躊躇している皆様、心配ご無用、必要なのはSPHの研究分野への興味とやる気のみです。
SPHには様々な専門性を持つ方が在籍しており、実習やディスカッションは実に刺激的です。私は佐藤俊哉先生ひきいる医療統計の研究室で課題研究を行いましたが、単に医療統計の研究を行うだけでなく、他分野の方に分かりやすく説明するプレゼンテーション技術についてもご指導いただきました。自身の専門性を深めると共に、様々な専門分野の方と協力をし、新たな価値の創造を目指したい皆様、ぜひ京大SPHで切磋琢磨しましょう。

 

小林 大介
医療経済学分野

社会健康医学系専攻に入学することになったのはまったくの偶然からでした。私はそれまで金融機関向けの融資支援システムのSE、コンサルタント営業として働いており、金融機関の担当者と、企業経営について話すことも多くありました。また、地方の医療機関の経営状態についてもよく話題に上がっておりました。そんな中、大学時代の友人より医療経済学という分野があるという話を聞き、この分野を勉強してステップアップを図ってみようと思い、大学院へ進みました。
本専攻では学生のバックグラウンドは様々で、私のような社会人経験者はもちろん、学部からの進学者もおられました。社会人経験者も、各科の専門医(総合病院のように領域がそろいます)や、独自の得意分野を持った企業出身者など、幅広い分野から集まります。本専攻では1年目の前期では各専門分野の先生方から医療の分野については当然のこと、研究方法などもみっちり教わります。もちろん一方向的な講義ではなく、学生の参加を促すものです。そこで学んだことを生かして、後期からは研究に入ります。私もこの2年間で3回ほど学会発表もさせていただきました。本専攻での学びは非常に大きなものと感じております。
確かに非常に忙しい時期もありました。しかし、ここで知り合った仲間とランチをしたり旅行に行ったりと、まるで学生のような(いや、学生なのですが)こともできました。私も最終的には博士後期課程へ進学し、今後も研究を続ける道を選びましたが、本専攻で学んだ仲間が、今後の日本の、いや世界の医療の分野において、本専攻での学びを生かしていくと確信しております。

 

佐藤 智佳
遺伝医療学分野

医療の場でも「遺伝」という言葉を目にすることが多くなり、「遺伝」という悩みを抱えながらもどのような人生を送るかが大事ではないだろうかと考えるようになりました。そして、SPHの中の遺伝カウンセラーコースへ入学しました。
入学後は、系統的なSPHの講義や遺伝カウンセリング実習を受けながら、その中で自ら課題を見つける努力が必要であり、未知なる世界との出会いを繰り返す日々でした。正直なところ、今までの思考では対応しきれず、卒業することはできるのだろうかと思ったことも多々ありました。しかし、たとえ困難であっても、SPHには多様なバックグラウンドをもつ同級生、先生方がおり、私が持っていなかったことを少しずつ吸収していき、思考が広がっていくことを実感できました。また、遺伝カウンセラーに必要な態度について考え、その中で遺伝カウンセラーとしての課題を見つけ、研究を取り組みました。
日々忙しいとは言え、同級生との会話を楽しんだり、京都という街で桜や紅葉を見て気分をリフレッシュすることもできます。何よりSPHという場を大いに活用し、充実した時間を過ごすことができたと思います。

 

北野 華子
健康情報学分野

私は子どものInformed Assentに興味・関心をもち、医療の視点から勉学を深めたいと思い、本学の社会健康医学専攻(SPH)に入学しました。入学前から本学のSPHでは、医療の問題に興味・関心をもつ人と出会えると聞いておりました。様々なバックグラウンドをもつ学生さんの話、また現場の当事者から話を聞けることはとても貴重であり、ここでしか得られない出逢いと経験です。
私は大学を卒業してすぐSPHに入学したため、社会経験もバックグラウンドもありません。でも、医療を受ける一人の患者の立場として、医療の問題と向き合い、発信することが重要であると本専攻の学生生活を通して、私は実感しました。議論の中では、時に納得がいかないこと、理解できないこともあります。でも「社会の健康」であるために、こうした多様なバックグラウンドをもつ人たちが議論し合うことができるのはSPHだからこそできることであり、本専攻の魅力の一つです。
そして、私がSPHの勉学を通して学び得たこと。それは、研究は多くの人が関わり、そして支えられていることです。調査協力して下さる方、指導して下さる先生方、共に勉学・研究する学生の皆さん。こうした人の支えがあったからこそ、研究結果が出すことができたと私は思います。そんな皆さんに、私はたくさんの「ありがとう」を伝えたいです。

 

高山 幸次郎
知的財産経営学分野

ビジネスを通じて生命科学を社会に還元する方法を学びたい、その思いでこの社会健康医学系専攻(SPH)に進学しました。入学してまず驚かされたことは、学生の多様性でした。SPHは、多彩な研究分野から成り、そこには実に多様なバックグラウンドをもった学生が集まります。医療系学部出身者のみならず、理学や工学、社会科学など非医療系学部出身者も数多くおり、社会人経験の有無やその長さもみな異なります。今まで出会ったことがないような方々と共に講義を受け、議論を交わすことは、とても刺激的で学びの多い時間でした。
また、意欲があれば、様々な学びの場を提供してくれる懐の深さが、SPHにはありました。私の所属する知的財産経営学分野では、実務を通して学ぶために、インターンシップ制度を導入しています。私は、京大発創薬ベンチャーを先生にご紹介していただき、一年間インターン生として非常に刺激的な毎日を送ることができました。座学だけでは決して得られない、多くのスキルや経験を得ることができたと思います。
SPHに進学したことで、今まで知らなかった新たな世界が広がりました。ここで得られた知識や経験、そして出会えた人々は、どれもかけがえのない財産です。

 

足立 歩
環境衛生学分野

私は、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」に感銘を受け、将来は環境汚染物質や医薬品の安全性に関するリスクコミュニケーションを実践できる人材になりたいと思い、環境汚染物質の長期モニタリングと毒性学について学ぶことができる環境衛生学研究室へ進学しました。
本専攻では、社会疫学・医療統計学等の講義形式の授業が大変多く、特に医薬品行政学では、医薬品承認申請・非臨床及び臨床試験の仕組み・行政サイドからの医薬品規制の考え方等について学ぶことができ、化学物質の規制について興味のあった私にとっては、大変充実したカリキュラムでした。また、多様なバックグラウンドの社会人の方々とチームを組んで学習する、疫学実習等の実習科目も用意されており、就職活動で必要なチームでの目標達成能力を養うこともできます。さらに課題研究では、福島県の放射能汚染調査に参加し、日本国民が今まさに直面している最新の環境汚染問題に関する研究に携わることができ、当研究室で学べたのは、本当に何かの御縁ではないかと思っています。
環境汚染問題・医薬品の安全性等に興味があり、将来、製薬企業の研究職(安全性)や環境省・厚生労働省で化学物質の規制に携わりたい方は、ぜひ当研究室の門をたたいてみてください。

 

岩村 治香
社会疫学分野

アフリカでHIV/AIDSの予防啓発を行うNGOで働いた経験から、ニーズを把握した効果的な政策設計のできる人材を目指し進学しました。
講義では、多様な視点から医療や健康問題を考える機会を与えていただきました。疫学や統計学などの客観的に事象を把握し分析することを学び、また医学コミュニケーションや情報学、経済学などでは、医療を取巻く社会を見る多角的な視点を得ることが出来たと思います。課題研究は、倫理委員会の審査から、研究を実施し発表までまとめあげるという一連の流れを経験することができました。
私にとっては、すべての作業が手探りでありました。一つ一つ、学びながら、先生方からの指導を受けて進めて行きました。自らの問題意識を具体化し、実現可能性との整合性を測り、研究を設計していく作業は、大変でしたが、今は達成感と自信を感じています。また、社会疫学のセミナーでは、留学生も多いこともあり、英語で行なわれています。国際的な視点を養い、語学力も養うことができました。SPHでの2年間は、非常に忙しくあっという間でした。しかし、非常に濃い学びができたと思っています。この経験を活かし、社会に貢献できるような人材になりたいと思います。

 

陳 玟玲(ちん ぶんれい)
人間生態学分野

SPHにはいろいろな分野があります。興味のある授業を選ぶことができて非常に自由な雰囲気でした。
授業では他の分野からのクラスメートとディスカッションをして、様々な意見を聞くことができて自分の考え方が幅広くなりました。さらに、授業での宿題のおかげで研究方法や物事の概念を詳しく知ることができました。
高齢化社会が進んでいる日本で、高齢者に対してどんな政策やサービスが行われているのか大変興味があり、毎年「フィールド医学」として高知県土佐町で高齢者の健康診断診に参加できたことが、自分にとって素晴らしい経験になりました。土佐町で行われている健診では高齢者の健康を考える際に、医学の側面だけではなく、身体的機能、精神、心理、社会、環境の側面も重視していたことが大変勉強になりました。これから、台湾も高齢化社会に直面することになります。SPHと土佐町健診での経験をとおして、台湾でも「フィールド医学」の概念を発展させることができれば、高齢者に対して一層よりよい社会と制度をつくれると期待しています。

■博士後期課程

 

野間 久史
医療統計学分野

私は、平成18年に社会健康医学系専攻の第7期生として専門職学位課程に入学し、博士後期課程まで6年間、本専攻に在籍しました。私は、大学で理論統計学を学び、そのまま大学院に進学してきたという背景を持ちますが、本専攻はさまざまなキャリアを持つ学生で構成されています。半数以上が社会人経験のある学生であり、「学問を究める」というよりは、実務上の問題について、明確な問題意識を持った学生さんが多いというのが特徴だと思います。若い学生さんにとっては、そういった「社会の先輩」となる方々と共に学ぶ機会は、大変よい刺激になると思います。
もちろん、研究の道を志す方にも充実した環境であり、本専攻の教員陣は、公衆衛生科学のさまざまな領域の世界的な研究者で構成されています。教育にも大変熱心な方が多く、私個人も、この6年間で、分野を横断して、さまざまな先生に教えをいただきました。大学院生の研究水準も高く、在籍期間に、最先端の研究で、世界的に優れた実績を上げる方もいます。また、博士後期課程では、専攻全体での合宿など、分野を横断しての交流の場も設けられています。
社会健康医学系専攻は、公衆衛生科学を本気で学びたい、探求したいという方にとって最高の環境を提供してくれる場であると思います。志ある方は、是非その門を叩いてみてください。

 

小川 淳
薬剤疫学分野

製薬会社の開発部門で医薬品開発に10数年携わった後、医療統計や疫学を含む「臨床研究」学について体系的に学び直したいとの思いから、社会健康医学(SPH)の博士後期課程に社会人学生として入学しました。SPHの講義プログラムは系統的に整備された素晴らしいものであり、これまでなんとなく分かったつもりになっていたことについて体系的に理解を深めることができました。
博士後期課程では自己の研究テーマにはかなり自己裁量が与えられましたので、自分のやりたい研究ができると意気込みましたが、実際にやってみると、漠然とした疑問からリサーチクエスチョンを設定し、研究計画に磨き上げるというプロセスは大変難しいものでした。指導教官と教授のタイムリーで暖かな指導を受け、なんとか研究成果を生み出すことができました。
SPHには学士から直接入学した方以外にも、医師、薬剤師、経営修士、海外留学経験者などさまざまな社会経験を積んだ方々が在籍しています。医療をよりよくしたいという強い思いを持っているという点でみなさん一致しており、異なる視点の意見を日々交換することで自分の思考の幅を広げることができたと思います。
京都大学のSPHは臨床研究の基礎を学ぶには最高の環境です。今後も多くの方がSPHの門をたたくことを願っています。

 

森 寛子
健康情報学分野

「何故、今、大学院に進学するの?」「何を勉強するの?」
社会人大学院進学を志す者なら、誰もが反芻する問いではないでしょうか? 私の場合、家族が老いて病み死を迎える経緯に間近に関与したことが契機となり、さらに社会とのかかわり方や自分の視座も変革したいと願い、学究生活を志しました。
非医療系の学生も受け入れるSPHは、「人が健やかに生きる社会の実現」という中心軸はあるものの、多様なキャリアを持つ学生各人が、身近で重要なテーマを抱いています。また、臨床研究を志す医療者と同次元で議論する環境も、大きな特徴です。研究テーマを医学研究に昇華させるには、公衆衛生の知識、分析手法、論旨を整えた議論、実直で単調な分析作業など様々なことが求められます。研究過程には常に不確実性が伴い、強い意志と粘り強さ、不安に耐える気持ちも必要でしょう。しかし、他者の研究を尊重し鋭さと優しさで議論してきた友人、教育的慈愛に満ちた教官、厳しく、時に強く鼓舞してくださった指導教官など、学究生活ならではの人との出会いも忘れ難い出来事です。 研究をめぐっての濃密な時間が、京都には繰り広げられています。進学の目的がかなえられたかは、言うに及ばず、でしょうか。

 

木村 友美
人間生態学分野

私は専門職学位課程から博士後期課程まで5年間、人間生態学(フィールド医学)講座にて研究を行いました。私は栄養学の出身ですが、より人の健康に関与する食事の研究をしたいという想いからこの社会健康医学系専攻へ入学しました。
専門職学位課程では、重要な基礎となる疫学、医療統計学などの授業が多く、専門知識を詰め込むのに必死でしたが、博士課程からはよりフィールドでの研究に没頭できました。所属する人間生態学(フィールド医学)講座では実際に国内外のフィールドへ出て、高齢者の総合機能健診を行うことでデータ収集・解析までを行いました。私は特に高齢者の健康に関連する食事の摂取状況に興味を持っていたので、フィールドでの食事調査のためのツールを開発し、実際にそれを健診に用いて他の多くの検診項目との関連をみました。
日本国内のみならず、インド、中国のヒマラヤ高地、エチオピア、ペルーなどにも健診に行く機会をいただき、各地で自身の開発したツールを用いて食事調査を行うことができ、研究としての成果のみでなく、現地に滞在し地元の人々との触れ合いを通じて大変素晴らしい経験をさせていただきました。

■医学博士課程

 

梅垣 岳志
医療経済学分野

「医療の質を評価する」。この漠然としたテーマを科学的に検証するため京都大学大学院医学研究科へ学びに請(恋)いました。
一般的には公衆衛生でくくられがちですが、ここは違います。分野を細分化し、それぞれの分野のエキスパートが寄り集まり、講座間の集いを大切にする数少ない研究所です。私は医療経済学教室で、自由なテーマを持ち研究をさせて頂き、かけがえのない財産を手に入れることが出来ました。臨床研究は適切なモデルデザインから解析、結果の解釈まで気の抜けない作業の積み重ねです。ヒトを対象とする大胆かつ繊細な分野だと気づかされました。社会健康医学の守備範囲は広く、学会発表や論文発表の集計を見て頂いても理解できますが、多くの個性あふれる研究が送り出されています。京都大学の自由な風潮も追い風となり、各個人のテーマをとことん追求することが可能です。決して個人では成し遂げることが出来ない研究を組織でバックアップ(とことん後押しのある組織です)して頂けるこの学び舎に多くの方が来て頂けることを心から願っています。4年間を振り返り感謝の気持ちでいっぱいです。